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「個人昇格は大歓迎」と言い切る
J2山口・霜田監督の育成術、前編。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byNorio Rokukawa

posted2020/02/22 11:50

「個人昇格は大歓迎」と言い切るJ2山口・霜田監督の育成術、前編。<Number Web> photograph by Norio Rokukawa

タイキャンプ中にインタビューに応じた霜田正浩監督。その育成法が、レノファ山口のクラブとしての立ち位置を確固たるものにしている。

引き出しを全部開けるつもり。

――甘さとは、具体的にどういうところですか?

「守備のところ。これだけ失点が多くなったのは、選手だけのせいではない。守備にちゃんと取り組んで、失点を減らすことだけにフォーカスしたら、もう少し上の順位に行けたと思うけど、それによって1年目に積み上げた攻撃の良さ、レノファのスタイルが消えてしまうのが怖かった。そこに葛藤があったんだけど、結局、自分が甘かったなと。

 でも、守備と攻撃のバランスを取ることは自分の引き出しにもあるし、今年は昇格から逆算してチームを作りたい。勝負の3年目なので、いろんな引き出しを全部開けるつもりです。3年目も指揮を取らせてもらえることが決まったときに思ったのは、誰よりも自分が一番ハードワークをしなきゃいけないなということ。それでシーズン終了後、『1週間だけください』とお願いして、リフレッシュと勉強を兼ねてヨーロッパに飛んだんです」

――ご自身をアップデートするために。

「ヨーロッパに行って刺激を受けたい、勉強したい、いろんな人と会って話をしたいという欲求がすごくあってね。監督というのは、選手に好きなようにやらせて、勝ちました、負けました、責任は取ります、という仕事ではないと僕は思っているので。選手をどう伸ばすか、チームとしてどうやって勝点を取っていくか、僕自身がもっと突き詰めて考えなきゃいけないなと」

元ジェフのボス監督に聞いたひと言。

――ヨーロッパではどこを回ったんですか?

「12月1日にクラブの公式行事がすべて終わって、2日からオフだったんだけど、もう1日の夜に飛行機に乗って。最初にドイツのレバークーゼンに行きました。監督はかつてジェフでプレーしていたピーター・ボスだから、知人に紹介してもらって。

 練習を見せてもらったのは1日だけだったけど、朝から晩までクラブハウスにいて。ボスの部屋にも入れてもらって、ボスがビデオやパワーポイントを使いながら、彼のフィロソフィやプレーモデルをじっくり聞かせてくれた。すごく新鮮で、濃密でしたね。うちのテクニカルコーチの武石(康平)を連れて行ったら、ボスもレバークーゼンの分析担当を紹介してくれて」

――武石コーチにとっても良い経験でしたね。

「ヨーロッパは初めてだと言っていたからね。通訳を介さず、英語で直接話ができたのも良かった。ボスはレバークーゼンに来る前、フィテッセやアヤックス、ドルトムントなど、いろんなチームを率いている。ドルトムントではうまくいかなかったんだけど、自分の哲学やプレーモデルはチームによって変えるのかと訊いたら、『まったく変えていない』と。

 そのひと言を聞けただけで僕は大満足。『ミスター・シモダはどんなサッカーをやっているんだ?』って訊かれたから、同じようなことをやっているんだけど、うちにはこういう問題があって、という話もできた。とても濃密な時間でしたね」

【次ページ】 ロペテギとポルトガル語で直接会話。

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