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孤高を突き詰めたスーパースター、
コービーの人間味あふれる素顔。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2020/02/03 11:30

孤高を突き詰めたスーパースター、コービーの人間味あふれる素顔。<Number Web> photograph by Getty Images

筆者が最後にコービーを見かけたのは、昨年12月29日に行われたレイカーズvs.マーベリックス。娘のジアナともに訪れていた。

試合中にジョーダンへ質問。

 コービーの成長に欠かせなかったこととして、競争心や練習熱心だったことがよくあげられるが、もうひとつ、欠かせなかったことに好奇心があった。

 何しろ、若い頃から質問魔だった。自分が興味を持っていることは徹底的に調べ、その分野のエキスパートに直接質問をぶつけた。

 レギュラーシーズンの試合中に、マイケル・ジョーダンに質問したこともあった。フリースローでクロックが止まっているときだったとはいえ、ジョーダンも驚いていた。それでも、コービーが聞いたポストアップ時の足の幅の取り方について、その場でアドバイスを与えたという。

 ベテランになってからも、コービーの質問魔は変わらなかった。

 ドウェイン・ウェイドがケーブル局、TNTの追悼番組で明かしたエピソードによると、2010年6月、レイカーズがボストン・セルティックスとNBAファイナルで対戦していたある日、コービーから電話がかかってきて、セルティックスのディフェンスに対して、ピック&ロールを使ってどう攻めるのがいいと思うか、アドバイスを求められたのだという。ウェイドがピック&ロール攻撃の名手だと見込んでのことだった。たとえ年下であっても、自分よりよく知っていると思えば、躊躇なく質問する。それが、コービー流の成長の秘訣だった。

近寄りがたいと思っていたが……。

 現役時代のコービーには、孤高の人、人づきあいが苦手な人というイメージがついていた。NBAに入った当初、ベテラン選手が多いチームで孤立していたという話が広がったからかもしれない。チームメイトに対しても、厳しいことを言うことを躊躇しない性格からくるイメージだったかもしれない。しかし、実際には、ほかの人との間の垣根は低い人だった。

 以前、コービーの個人トレーナーを務めていたティム・グローバーに、行動を共にするようになってわかったコービーの意外な一面について聞いたところ、こんな答えが返ってきた。

「外に出たときに、とても友好的でいい人なのが意外だった。知らない人と話したり、サインをしたり、写真を撮ったりといったことを進んでするんだ」とグローバー。

「彼の専属になる前に、多くのメディアで、彼は近寄りがたいという記事を読んだことがあった。実際にはその正反対だった。とても話しかけやすく、まわりにオープンだった。ほとんどのスーパースターは、外ではどちらかというとよそよそしいだけに、それは私にとっても嬉しい驚きだった」

 そういえば、現役時代に、そういった人当たりのいいコービーを見たことがあった。オリンピックやアメリカ大陸予選などの国際試合に出ているときだ。国際大会のミックスゾーンで、ファンのように記念撮影まで求める海外のメディアに対して、嫌な顔ひとつせず、記念撮影に応じていた。その姿は、勝負師というよりは伝道師のようでもあった。

【次ページ】 コートサイドで見せた父の顔。

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