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ノンスタ石田が語る漫才と競技化(1)
「M-1の影響でネタ作りが変わった」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2020/01/21 18:00
その年のM-1が終わると「あの人はどう思ったのだろう」と感想が聞きたくなる人がいる。石田明さんはその代表的な1人だ。
「決勝と予選のお客さんはぜんぜん違う」
――で、実際、初めて決勝に進出して、そこで優勝されたわけですけど、決勝は大爆笑でしたよね。
石田「決勝と予選のお客さんは、ぜんぜん違うんです。予選ってけっこう難しくて、わざわざ予選にくるくらいの人たちなので、相当、お笑い好きなんです。なので、ありきたりだと笑ってくれない。そこへいくと、決勝のお客さんはもう少し軽いというか、温かい。ベタなことで大笑いしてくれる一方で、尖ったこととか、小難しいことをやると逆にしらーっとしてしまう。
僕らが2008年につくったネタは、その中間ぐらいに位置するネタだったんです。玄人もうならせることができるし、素人も爆笑させることができる」
天竺鼠はなぜ5位だったのか。
――今回の敗者復活戦で天竺鼠がものすごいウケていたのですが、視聴者投票では5位でした。言葉のセンスもあってM-1向きだと思えるのですが、あのコンビは今まで、なぜ一度も決勝の舞台に立てなかったのでしょうか。
石田「おもしろかったですよね。僕も今年、敗者復活戦を観た中ではいちばんおもしろいと思いました。笑いの量だけで言えば断トツだったと思います。彼らのことを評価する仲間はたくさんいます。
ただ、審査員の方たちの中には、いろんな苦い記憶もあるんだと思います。予選ではめっちゃ受けたけど、決勝にいったらめっちゃ滑ったとか。そういうコンビ、たくさんいるじゃないですか。予選の雰囲気の中でおもしろいと思えるコンビと、決勝で爆笑を取るコンビって、必ずしも一致しないんですよね。センスを感じさせるコンビほど、決勝でそれがどう出るかわからない」
――天竺鼠は、どちらかというと癖の強いコンビなので、決勝向きではないと判断されたということでしょうか。
石田「うーん、そういう考えが働いたとしても不思議ではないと思います。そんな中、2018年にトム・ブラウンが決勝に出てきたのにはちょっと驚きました。超個性的なコンビですからね。結果的には決勝の重苦しいムードを彼らが変えたので大正解だったわけですが、高得点をつけた審査員は『私が責任を取りますので』ぐらいの覚悟はあったんじゃないですか」