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ノンスタ石田が語る漫才と競技化(1)
「M-1の影響でネタ作りが変わった」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2020/01/21 18:00
その年のM-1が終わると「あの人はどう思ったのだろう」と感想が聞きたくなる人がいる。石田明さんはその代表的な1人だ。
今の若手はM-1を意識してネタを作る。
――決勝のネタ時間は4分ですが、これも漫才をする時間としては相当、特殊なわけですよね。
石田「寄席と呼ばれる吉本の劇場や営業だと、通常、10分から15分ですね。なので僕らの時代は、10分用のネタをM-1用に半分以上に削っていた。もしくは、まったく別につくっていました。
でも今の若手は10分の出番だったら5分のネタを2本やるのが当たり前になっています。『もうええわ』って1本目を締めて、『そんなことよりな』って2本目のネタに入る。5分ネタなら無駄を削って4分にするのは簡単ですからね。これは完全にM-1の影響だと思います。
吉本としては、まずNGKなどの劇場で通用するネタをつくって欲しいというのが本音だと思いますが、やはり出場資格のある若手は、どうしてもM-1のことを考えてしまいますよね」
M-1優勝ネタは今はやらない。
――M-1で優勝したときのネタは今でもやること、あるんですか?
石田「まったくやりません。優勝した後は、その余韻でちょっとやっていましたけど、あんまりウケませんでした。M-1というのは本当に特殊な舞台なんですよ。普段、お客さんが、あんなに集中して漫才を観ることってないですから。
寄席や営業って『お菓子、わけてくれる?』みたいなことを言いつつ、ゆったり鑑賞する場なので、競技のための詰め詰めにした速いテンポの漫才なんて誰も求めてないんです。僕らのM-1のネタは劇場ネタを縮めたというより、もう完全にM-1用につくったネタだったので、それを10分に延ばしてもおもしろくなるはずがないですし。
もう1つ言うと、競技用漫才のネタって、熱量が高いんです。でも劇場でいきなり熱量の高い漫才をすると、お客さん、びっくりしちゃうんです」
――ノンスタイルは優勝以前、2002年、2005年、2006年、2007年と4度、準決勝で散っていますが、なぜ、通らなかったのでしょう。
石田「簡単に言うと、自分たちの得意ジャンルしかしてこなかった。ウケるための近道ばっかり探してたんで、審査員からしたらそれが鼻についたんだと思います。なので、一度、これまでやってきたことを全部、捨てることにしたんです」