ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
世界中を転戦する旅人ゴルファー。
26歳川村昌弘「念ずれば、叶う」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byMasahiro Kawamura
posted2020/01/15 18:00
ゴルフ界のレジェンドでもあるゲーリー・プレーヤー(左)と写真に収まる川村昌弘。
プライベートも含めると、30カ国。
とはいえ、それが直接的に“リッチ”かというとそうでもない。
1年間の移動や宿泊等の経費でいうと、日本ツアーの2倍以上が米ツアーではかかると言われ、アジアやアフリカを含めた年間29の国と地域(2020年)を行脚する欧州ツアーはさらにその倍、というのが最近の相場だそうだ。川村は昨年、プライベート旅行も含めて30の国と地域を回った。移動距離は約25万kmにも上る。経費は「(獲得)賞金のだいたい半分くらいにはなりますかね」という。
プロゴルファーという仕事は、数ある職業アスリートのなかでも“ギャンブル性”が高いように思う。例えばチームスポーツならば、契約する球団やクラブが移動費や宿泊費を負担してくれるが、ゴルフはそうはいかない。基本的にはお金を稼ぐために、まず身銭を切らなくてはいけない。予選を通過できなければ賞金はゼロ、という生活が延々と続く。
ケニアでは「Uberが使えた」。
そんなシビアな暮らしぶりにも、悲愴感を漂わせないのが川村でもある。
昨年、オーストラリアの片田舎のコースでは同国のキャディたちと一緒にレンタルハウスに泊まった。残る記念写真のなかで東洋人は彼だけである。昨年新たにできたアフリカ・ケニアの試合に喜び勇んで出向き、牛や馬も歩いていた車道で「Uber(配車アプリ)が使えた」と驚いたことも。出ることを熱望していた夏場の全英オープンの出場権をつかめず、ガッカリしたのもつかの間、ぽっかり空いたオープンウィークに父・昌之さんとスコットランド、ウェールズのゴルフ場を訪ねてプライベートラウンドを楽しんだ。
一方、帰りを待つひとの心境。「心配です」というのは母の那緒美さんである。
「最初のうちは成績も良くなればいいなと思っていたんですけど、結果は気にならなくなりました(笑)。試合に出られているだけで。安全に、健康に、どこも痛いところがなければ、それでよしと思うようになりました」
気ままな旅人暮らしも、それを陰で支える大きな優しさあってこそである。