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谷口徹、藤田寛之、片山晋呉。
第一線でもがくベテランの生き方。

posted2019/12/27 07:00

 
谷口徹、藤田寛之、片山晋呉。第一線でもがくベテランの生き方。<Number Web> photograph by Getty Images

日立3ツアーズ選手権ではPGAツアーの一員として若手たちと争った谷口徹。

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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「けれど、人間は負けるようにつくられてはいないんだ。殺されるかもしれないが、負けはしない」

 かのアーネスト・ヘミングウェイがノーベル文学賞を受賞するに至ったと言われる『老人と海』の有名な台詞である。

 カジキマグロに始まり、後にサメと格闘を繰り広げる漁師・サンチャゴ。人にとっての真の意味での勝利とは、敗北とは何か。少なくともそれは、目に見える釣果や大金といったもので表現されることはない、はずなのだ。

 プロゴルフの世界でも、ベテランの言動に触れるとそんなことを考えてしまう。

51歳谷口徹が流した涙。

 11月末のカシオワールドオープンは、日本男子ツアーのシーズンの終わりから2番目の試合にあたる。石川遼が今季3勝目を挙げた最終戦は、年間優勝者など30人のエリート選手だけが出場するため、カシオ――はフルフィールド(108人)の実質的な最後のゲーム。賞金王争いが佳境にある一方で、翌年のシード選手が決まる一戦だ。

 今年、思いもよらないハプニングは2日目に起こった。

 出場選手で最年長、51歳の谷口徹が人目もはばからず泣いた。

 シーズン7回目の予選落ちが決まり、賞金ランキングは104位に終わった。65位までの選手に付与される賞金シードを守ることができなかった。メディアの囲み取材エリアで足を止めたその時、両手で顔を覆い、声を殺すようにして涙を流した。

「今年はいままでにないくらい練習したけれど、思うようにできなかった。若手もうまくなっているなかで自分も戦うためには現状維持では勝てない。自分が思っていたようなゴルフができなかったのが悔しい。いつかこういう時が来ると思っていたけれど、今年は……自分ではそうなるとは思わなかった。努力だけではうまく行かないな。でも結果がすべて」

 2回の賞金王(2002、2007年)。昨年シニア入りしてもレギュラーツアーに籍を置き、若手を厳しく叱咤してきたご意見番ゆえ、その様子はある意味でショッキングだった。

 ひとつ強調したいのが、谷口には来季もレギュラーツアーの出場資格があることだ。2018年に国内メジャー・日本プロで優勝したことで、来季どころか2023年までのシード権を持っている。職場確保のため、国内外を奔走する選手たちとは立場が異なる。

 だが、1997年につかんだ賞金シードというツアープロとしての称号を手放したことが胸を裂く。22年連続でのキープは、32年連続の尾崎将司を筆頭にしたランキングで4番目の数字として残った。

【次ページ】 賞金シードはツアープロの“看板”。

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