ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
世界中を転戦する旅人ゴルファー。
26歳川村昌弘「念ずれば、叶う」
posted2020/01/15 18:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Masahiro Kawamura
「教えるのは苦手なんですけど、きょうは1日、よろしくお願いします」
各ゴルフトーナメントの試合前に行われるプロアマ戦。大会関係者をもてなす懇親の時間で、川村昌弘はスタート前にたいていそう挨拶をする。
5歳でゴルフを始めてからというもの、ほぼ独学で作り上げてきたスイングは、本人からすればメカニズムを簡単に他人に説明できるものではないそうだ。
ティイングエリアでドライバーを構え、まずクラブヘッドを腰のあたりまで上げて軌道を確認。バックスイングに入ると、ぐぐっと力が右足に充填されていくのが分かる。最近では口の悪いプロ仲間からは「地面が右に傾くぞ」なんてイジラれることも。クラブヘッドは独特な形の弧を描いて、体に引き付けられ、鋭いリストターンでボールを飛ばす。
自分の感覚を言葉にするのは難しい。ひいてはゲストのアマチュアを相手にテキトーなレッスンはできない、というプロゴルファーもまた珍しい。
ゴルフと同じぐらい旅が好き。
ユニークなのはスイングだけではなくて、近年の彼の生き方は、ほかの多くの日本人ゴルファーとは一線を画すものだ。
ゴルフと同じくらい旅が好き。プロとして唯一の優勝を日本ツアーで手にした2013年以降、アジアから世界への道を拓き、2018年末に予選会を通過して翌年の欧州ツアーの出場権をつかんだ。
その'19年は限られた出場機会を活かして27戦でトップ10入りが4回。年間ポイントレース(レース・トゥ・ドバイランキング)56位に入り、2020年のシード資格を獲得した。
日本とアジアでも数試合に出たが、メインの欧州ツアーで約62万6889ユーロの賞金を稼いだ。日本円にして約7516万円という額は、日本ツアーの賞金ランクに当てはめてみると8位に相当する。「日本人の男子プロ」に限定して'19年シーズンの獲得賞金額をみると、米ツアーの松山英樹を筆頭に、今平周吾、石川遼、堀川未来夢に次ぐ5番目だった。