“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
選手権V静岡学園の「勝つ意識」。
上手いだけでは青森山田を崩せない。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/01/14 20:30
1995年以来、2度目の選手権優勝を飾った静岡学園。10番松村を中心に、優れたテクニックで王者・青森山田を撃破した。
青森山田が高校サッカーを変えた。
最後の最後に、大会2連覇を逃す形となってしまった青森山田。だが、この結果で彼らの価値が下がることは一切ない。言うなれば、青森山田は現在の高校年代の1つのランドマークだった。今大会はそれをいかに崩すかが、大きなポイントだった。
それはまさに、世界のサッカーの潮流と似ていた。かつてACミランから始まった3ラインでのプレッシングを主体とした4-4-2が世界に広がり、それを崩すためにバルセロナを始めとした攻撃主体のポゼッションサッカーが生まれ、そのスペインのサッカーを封じるためにイングランドやドイツが攻守の切り替えを早くし、前線から連動してプレスをかけるショートカウンター型のサッカーが生まれた。
この流れのように、青森山田が王者として君臨するからこそ、静岡学園を筆頭に帝京長岡、昌平というテクニカルなチームが「ただ上手いだけでは青森山田を崩せない」とハードワークと攻守の切り替え、そしてセットプレーに目を向けて、チームスタイルをブラッシュアップすることができた。
黒田監督「これも重要な経験」
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青森山田は徹底した「山田スタイル」を体現し、プレミアリーグでは日本トップレベルのテクニカルなチームをはじき返してきた。だからこそ、今大会はそれぞれのチームが常に考え、工夫し、技術だけではないものを発揮できた。青森山田が彼らの持つ特性と力をフルに引き出したと言っても過言ではないのだ。
「昌平、帝京長岡、静岡学園と3試合続けてはさすがにきつい。この中で選手たちはよく伸びたと思う。これも重要な経験。ここからですよ」
黒田監督が決勝後にこぼした言葉がすべてを表していた。当然、これで青森山田スタイルが崩れるわけではない。この経験でさらに、そのスタイルは磨かれていく。
98回目の大会は最高の試合で幕を閉じた。史上最多の観衆の前で戦った何人の選手たちが、この先さらに輝いて観衆を沸かす存在になれるのか。そこに想いを馳せながら、また新たな1年が始まる。