スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大型契約と組織のカルチャー。
MLBのFA、大物たちが即決した訳。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/12/21 11:30
12月18日、ヤンキースタジアムで行われた入団会見。コールは妻、代理人のボラス(右)との写真撮影に応じた。
ヤンキースの「空白」を埋める可能性。
2018年1月にも、ヤンキースはコールを獲り損なった。
当時彼が所属していたパイレーツにトレードを持ちかけたのだが、このときはアストロズが好条件(有望な若手投手2名+有望な若手三塁手1名+マイナーリーガー1名)を提示し、横からさらっていってしまった。
そんな経緯を思えば、ヤンキースが喜びを隠せないのも当然だろう。
2009年を最後に、ヤンキースはワールドチャンピオンの座から遠ざかっているし、年間200イニングス以上を投げたピッチャーも、2013年のCC・サバシアと黒田博樹以来出ていない。コールの右腕は、ふたつの空白を埋める可能性がある。
優勝リングを手に入れたい、という動機。
もともとコールは、カリフォルニア州オレンジ郡の出身だ。育った家はエンジェルスの本拠地から10キロと離れていないし、大学もUCLAを選んだ。
そんな背景を見て、彼はエンジェルスかドジャースを選ぶのではないかという説が流れていたが、大リーグは地縁で動くほど単純な世界ではない。
ニュージャージー出身のマイク・トラウトはアナハイムに腰を据えているし、サンディエゴ生まれのストラスバーグもワシントンDCの球団所属だ。
コールの場合、今季逃したワールドシリーズの優勝リングを手に入れたい、という動機がかなり強く働いたようだ。
もうひとつの要因は、ヤンキースの新しいピッチングコーチにマット・ブレイクの就任が決まったことだろうか。
ブレイクは大リーグ経験こそないが、セイバーメトリクスに精通し、データ分析の鬼といわれている。やはり分析魔のコールにとっては、恰好のパートナーと映ったのかもしれない。
「個の能力」と「組織のカルチャー」がマッチした場合、どんな化学反応が起こるだろうか。