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フィギュア女子、GPファイナルで
見えた北京五輪への“2つのルート”。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2019/12/13 19:00
コストルナヤのフリーの演技構成点は73.27。出場6選手の中で唯一70点代に乗せる、美しく完成された演技を披露した。
4回転ジャンプの得点の高さを物語る。
とりわけ、4回転ジャンプの威力をまざまざと見せつけた大会となった。
フリーの技術点を見ると、2位のシェルバコワは94.52点、トゥルソワは96.80点に上る。コストルナヤは88.87点、紀平は77.90点。
シェルバコワとトゥルソワは、ともに4回転ジャンプをすべて決めたわけではない。
例えばトゥルソワは5本のうち2つを失敗している。紀平も4回転サルコウの失敗はあったが、技術点で大きく差がついたのは、成功をおさめた4回転ジャンプの得点の高さを物語っている。
公式練習でトゥルソワが何種類もの4回転ジャンプを跳ぶさまに、「笑えてきちゃいました」と紀平は語っていた。
昨シーズンの世界選手権でトゥルシンバエワがシニアでは初めて4回転サルコウを成功させたのを除き、4回転ジャンプなどなかったことを考えれば、驚きを通り越した感情が湧くのも不思議はなかった。
コストルナヤが勝てた理由。
それでも今回のファイナルで優勝したのが、4回転ジャンプのないコストルナヤであったのもまた事実だ。
コストルナヤが勝ったのは、トリプルアクセルをはじめとする各要素の加点の高さと演技構成点にある。失敗しないことも強みとなった。それは本人も自覚している。
「昨日(ショート)に続き、クリーンに滑ることができて、とてもうれしいです」
フリーで2位ながら、ショート、フリー、トータルでの演技で優勝を手にした。
シェルバコワ、トゥルソワはコストルナヤと比べれば、つなぎや表現など、どうしても演技全般に見劣りする面がある。
コストルナヤが4回転ジャンプはなくても勝てた理由だ。ただ、トリプルアクセル抜きに、コストルナヤの強さを考えるわけにはいかない。