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フィギュア女子、GPファイナルで
見えた北京五輪への“2つのルート”。
posted2019/12/13 19:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
それはある意味、象徴的なシーンであり、酷な場面でもあった。
12月7日、フィギュアスケートのグランプリファイナル・女子フリー。
最終滑走者であったアリーナ・ザギトワがキスアンドクライで得点が表示されるのを待っているとき、リンク中央上部にあるビジョンに、グリーンルーム(その時点で上位3名の選手が待機している場所)の様子が映し出された。
そこには、アリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トゥルソワの3人がにこやかに座っている姿があった。
映像が出た瞬間、それまでも厳しい表情だったザギトワの顔は、険しさを増したようだった。
ジャンプの転倒や数々の回転不足があったザギトワは、最下位の6位。グリーンルームにいた3人がそのまま、表彰台を独占することになった。
それは女子が転換期にあることをあらためて感じさせる場面でもあった。
3人でグランプリシリーズ6戦全勝。
今シーズン、シニアデビューを果たしたロシアの3選手は、3人でグランプリシリーズ6戦全勝を果たした勢いそのままに、ファイナルも席巻することになった。
原動力は、高難度のジャンプである。
優勝したコストルナヤは4回転ジャンプこそ跳ばないものの、ショート、フリーそれぞれでトリプルアクセルを跳んだ。
2位のシェルバコワはフリーで4回転ルッツを2本と4回転フリップを1本。3位のトゥルソワは実に5本の4回転ジャンプを入れた構成でフリーを滑った。さらに4位の紀平梨花もまた、トリプルアクセルを武器とする。