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あと1/4回転。羽生結弦が憧れの地で
4回転アクセルに挑んだ理由とは。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2019/12/11 10:30
4回転アクセルは“王様のジャンプ”と言う羽生。「ジャンプだけじゃなくてフィギュアスケーターとして完成させられるものにしたい」とも語った。
4回転と1/4くらい回っている印象。
彼のトリプルアクセルに比べると、少しスピードを落として飛距離を抑えている。そのぶん高さを出していた。踏み込んでからの浮き上がりでは、身体全体のバネを使って弾むように跳ぶ。
いずれも身体を開くタイミングが間に合わずに転倒したが、4回転と1/4くらい回っている印象だった。
「自分の中では、まだ高さが足りないなと思いました」
それが今回跳んでみた第一印象だという。得意とするトリプルアクセルのように流れや飛距離を生かすのではなく、高さタイプに変更したことについては、こう話した。
「色々なことをやったんですが、スピードをつけて跳んだ場合に、頭から落ちる可能性もあるし、回転がかからないんです。(わざと遅れて回転を始める)ディレイドアクセルと同じになってしまって、軸に入る速度が遅くなってしまうので、スピードをつけて跳ぶということは出来ないです」
真上にパワーを逃し、強い回転をかける。
アクセルの一般論として、成功させるためには、「(A)耐空時間の長さ」と「(B)回転数」が必要になる。耐空時間を増やすためには「(A-1)飛距離をのばす」か「(A-2)高さを出す」の2タイプがある。
そして回転数を4回転半にまで増やすためには「(B-1)軸を細くして回転速度を上げる」ことと、「(B-2)回転を始めるタイミングを早める」ことがある。
羽生がこれまで試行錯誤した結果、スピードをつけて(A-1)の飛距離タイプを選んでしまうと、前方に進むパワーが強すぎて回転をつけることが出来なかった。そこで(A-2)の高さタイプで、踏み切りの瞬間にエッジで強くストップをかけて真上にパワーを逃し、強い回転をかける手法を選んだという。
また、もともと身体が細く(B-1)の回転速度は十分にある。あとは(B-2)の回り始めるタイミングがまだ遅く、今後の課題だと感じているという。
「どんなに高く跳んでも、回転がかかる速度(タイミング)が遅くてはダメ。どれだけ早く回転をかけるかを考えています」