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FAはメジャー131人、日本は一桁。
これでは選手の待遇は上がらない。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGettyImages
posted2019/12/07 20:00
日本ではFA宣言することは「所属チームへの裏切り」と見る人も根強い。秋山翔吾などは幸福なケースなのだ。
選手会の承認なしに次々と変更が起こる。
日本でも球団削減騒動(注:1リーグ制になるはずだった)に揺れた2004年、選手会によるストライキが行われたが、それで「労使協定」が作られたわけではない。
「労使協定」があれば、雇用する側は、雇用される側の承認なしに労働条件を変えることはできなくなる。しかし日本では、選手会の承認なしに公式戦の試合数が増えたり、外国人選手が同時出場できる人数制限が緩和されるなど、メジャーリーグでは有り得ないことが起こり続けている。
その辺りは当事者にしか分からない諸事情があっただろうし、日本は日本のやり方で今日のプロ野球があると理解するしかないのだが、もしも日本のプロ野球に「労使協定」が存在したら、FA取得までの期間が短くなってポスティング制度が廃止され、「FA宣言」などというのもする必要がなくなり、FA選手が市場に溢れるなんてことも想像できる。
そうなれば年俸総額は今よりもさらに高額になるだろうし、自ずと球団の経営規模も大きくなる。
親会社が単独で球団を所有する時代は終わりを告げ、メジャーリーグのように複数の出資者が共同オーナーになる時代が来れば、日本にメジャーリーグに匹敵する国際的な野球リーグが誕生することになるかも知れない。
有望な高校生は自然にアメリカを目指す。
そんな時代がすぐには来ると思えないが、一軍で5年間プレーして通算44勝の投手が、シーズン20勝を挙げたサイヤング賞投手でもないのに、5年総額約130億円の契約を結ぶ29歳の投手が、どんな投球をするのかなんていう情報は、今どきの若い球児なら普通に持っている。
彼らを取り囲む枠組みが変わらず、彼らの上昇志向がどんどん刺激され続ければ、どうなるのだろう。
平均球速155キロ超えの速球を投げられる高校球児が、賢明に自分の価値を見定めることができるなら、彼らはきっと、若い内から普通に「世界」を目指すサッカー選手のように、「メジャー挑戦」などと肩肘張ることもなく、ごくごく普通にアメリカのプロ野球を目指すようになるのではないか――。