濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
21歳、江川優生が独走の戴冠劇。
K-1戦士は若いほど高レベル?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2019/11/28 11:30
アーサー・メイヤーを右バックスピンキックで悶絶KOさせた試合での江川優生。全試合KOという圧倒的強さで王座を獲得した。
江川のライバルは今の中学生か?
K-1ならではの状況も関係してくる。
現在のK-1は、完全に“殴る蹴る”に特化したルール。ムエタイの首相撲のように、相手を掴んで崩す攻撃が認められないのだ。組み付きで減点となる選手もいる。“掴み”一切禁止は他団体以上に“厳しい”。
だからこそ打ち合いも増えるわけだが、そこで勝つためにはルールに合わせた練習が必要になってくる。ボクシングが“パンチだけ”なのと同様に、K-1も“殴る蹴るだけ”だから、そのための技術が高度に進歩するのだ。
かつてのK-1は、キックボクサーや空手家が“参戦”してくる舞台だった。普段はヒジ打ちや首相撲を使うキックボクサーが、K-1に参戦する時は使う技や練習内容を変えていたのだ。しかし今は違う。K-1の選手は、最初から“K-1用”の練習しかしていない。
まして今のK-1はアマチュア大会も定期的に開催、ジュニア部門からプロの世界王者までの道筋ができている。そこでトップになればスターの座が待っている。他のルール、他の競技を意識する必要がない。
卜部は、他団体でヒジありルールを経験した最後の世代だろう。対して10代から二十歳前後の選手たちはK-1ルール特化世代。いわば“K-1の申し子”たちだ。そのトップにいるのが江川なのである。そして彼のライバルになるのは、今アマチュア大会に参戦している高校生や中学生かもしれない。