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調教師試験の受験14度を経た執念!
矢作師の腕はオーストラリア仕込み。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/11/15 17:00
豪GI、コックスプレートを制したリスグラシューの次走は有馬記念の予定。宝塚記念に続くグランプリ連覇を狙う。
国内外のGIを次々と制覇する快挙。
近年は、先述したモズアスコットの安田記念勝ちだけでなく、ラヴズオンリーユーによるオークス(GI、'19年)制覇や、リスグラシューでのエリザベス女王杯(GI、'18年)、宝塚記念(GI、'19年)と掴んだビッグタイトルは枚挙に暇がない。
また、ラヴズオンリーユーの全兄にあたるリアルスティールでは、'16年にドバイターフ(GI、UAE)を優勝。自身初となる海外GI制覇を成し遂げると、この10月にはリスグラシューでコックスプレート(GI、オーストラリア)も制覇した。
コックスプレートは国際競馬統括機関連盟(IFHA)が発表した2018年の「世界の100大GIレース」の第7位タイにあげられるほど、世界が認める大レースであり、以前より海外志向の強い矢作師にとっては「嬉し過ぎて涙が出なかった」(本人談)と驚くほどの快挙達成であった。
モズアスコットの連闘策も……。
そもそも矢作師は、JRA入りする前の若い時期にオーストラリアで修行を積んだ経験があった。
シドニーのロイヤルランドウィック競馬場やメルボルンのフレミントン競馬場に隣接する厩舎ばかりでなく、ローカルの競馬場にも身を置き、かの地の競馬を学んだ。
オーストラリアでは日本でいう連闘(2週連続使い)などは珍しい事ではなく、例えば有名なメルボルンCの前哨戦は同レースの3日前に設置されているなど「状態さえ良ければ短いスパンで使う」のは悪い事ではないという考え方が浸透している。
11月9日には日本のクルーガーとスズカデヴィアスがフレミントン競馬場で行われたマッキノンS(GI)に出走。これを制したのはアイルランドの伯楽エイダン・オブライエン調教師が送り込んだマジックワンドだったが、同馬はコックスプレートから中9日でメルボルンCに出走し、更に中3日でマッキノンSに挑戦して、結果を残したのだった。
思えばモズアスコットが安田記念を制した時も前の週にオープン特別を使って(2着)からの連闘策だった。今年はJRA通算600勝を達成した伯楽の手腕から目が離せない。