酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
トライアウト参加人数は年々減少も、
警備、保険会社人事が目立つワケ。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2019/11/13 18:00
2019年のトライアウト会場となった大阪シティ信用金庫スタジアム。この地が“プロ人生最後の地”となる選手も少なくないだろう。
独立L関係者が目立つネット裏。
いろんな思惑が交錯するグラウンドとは対照的に、バックネット裏には熱心に選手を見つめるスーツ姿の男たちがいる。
NPB関係者がいるのは当然のことだが、最近目立つのは独立リーグの関係者だ。特にBCリーグは積極的に元NPB選手を獲得している。このリーグには「26歳定年制」があるが、オーバーエイジ枠で名のある選手を獲得しようとしている。
さらに社会人野球の関係者も多い。昔と違ってプロとアマの垣根が低くなっている。関係者は主力選手としてぜひ獲得したいと熱い視線を送っている。今年は確認できなかったが、若い選手を獲得しようと相撲部屋の関係者がいたこともある。
警備や保険会社の人事がいる理由。
さらに、スタンドではなく球場の外で、トライアウトを終えた選手を待ち受けるスーツ姿の一群がいる。警備会社や保険会社などの人事担当者だ。車に乗り込もうとする選手に名刺と会社案内のパンフレットを手渡している。
プロ野球選手は屈強だ。しかも上下関係に厳しく、礼儀正しい。警備の現場リーダーや保険の営業マンとして格好の人材なのだ。
「うちは、若い選手より30歳前後が欲しい。そのくらいになると常識も身についてくる。何より野球選手は太い人脈を持っているから強いね」警備会社の人事担当者は話した。さらにはアスリートのセカンドキャリアのコンサルタントなどの姿もあった。
選手たちは「プロ野球をもっと続けたい」と思ってトライアウトに参加しているが、その周辺には様々な思惑で、選手にアプローチする人たちが集まっているのだ。
いつも感心するのは、スタンドのお客の温かさだ。いいプレーが出れば分け隔てなく大きな拍手を送る。選手にも「がんばれ」「まだやれる」と声をかける。応援団はいないが、ここには本物の「野球好き」が集まっていると実感する。
今年のトライアウトは午後1時20分に終わった。例年、2時過ぎまではかかるのだが、今年は選手が少なかったうえに進行が早かった。
投手は自分の出番が終わると引き上げるので姿はなかったが、野手たちがスタンドに一礼して引き上げた。