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プレミア12、不調から復活の3安打!
坂本勇人が天敵の残影を振り切った。
posted2019/11/14 12:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Nanae Suzuki
振り向いた視線の先には仲間たちの歓喜の姿があった。
「ベンチでめっちゃ、みんなが喜んでくれていたんで……」
こうはにかんだのは今大会、不振に苦しんできた坂本勇人内野手(巨人)だった。
「プレミア12」スーパーラウンド第3戦のメキシコ戦。2回1死一、二塁だった。メキシコの2番手、フェリペ・ゴンサレス投手の高めのツーシームを強引に左前へと運んだ。この坂本の大会初のタイムリー安打にベンチのボルテージが一気に沸騰する。その様子に応えて坂本も、一塁上で思わず両手の拳を突き上げ喜びを爆発させた。
前夜にアメリカに苦杯を喫して後が無くなった侍ジャパン。勝負のメキシコ戦を前に稲葉篤紀監督が、まず動いた。
本大会では2番に座り打線を牽引してきた菊池涼介内野手(広島)が、首の違和感を訴えてこの日の出場はドクターストップ。そのアクシデントを逆手にとって大幅な打線の組み替えを断行したのだ。
シーズン中に慣れ親しんだ打順で。
4番の鈴木誠也外野手(広島)だけはそのままに、3番に前日3打点の浅村栄斗内野手(楽天)と5番に外崎修汰内野手(西武)を前後に起用。1番には山田哲人内野手(ヤクルト)を抜擢して、2番に入れたのがこの大会、スランプに苦しむ坂本だったのだ。
「シーズン中にも2番を打っていて慣れ親しんだ打順できっかけをつかんで欲しかった」
そんな指揮官の願いを受けて立った1回の第1打席。先発のオラシオ・ラミレス投手の初球のツーシームを強引に引っ掛けた打球が、メキシコ内野陣のシフトの間を抜けて左前へと転がった。
「あまり分からない投手なので早めに仕掛けていこうと。たまたまシフトを敷いていてくれていたから。(シフトがなければ)ただのショートゴロでした」