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<女子ハンドボール世界選手権プレビュー>
おりひめジャパン「世界を倒す準備はできている」
posted2019/11/14 16:00
text by
田口有史Yukihito Taguchi
photograph by
Yukihito Taguchi
11月30日から開幕する世界選手権を熊本で迎えるハンドボール女子日本代表・おりひめジャパン。その強化は静かに、しかし確実にその歩みを進めている。
リオ五輪には男女共参加することのできなかったハンドボールだが、2020年の東京に向けて本場ヨーロッパ人監督を招聘して新しいスタートを切っていた。
特に女子は五輪前年の世界選手権の熊本開催も決まっていた中で、デンマーク人のウルリック・キルケリーを監督に起用。その強化を進めてきた。
だが、当初はこれまでの指導方法との違いに戸惑いもあったという。
過去3人の監督のもと、4回の世界選手権に出場してきた代表副キャプテンの永田しおりはいう。
「このチームがスタートした3年前は本当に戸惑いました。ウルリックはすごく、褒める。ポジティブなことしか言わないんです。正直私たちは褒められ慣れていなかったので、もっと怒って欲しいというか。パスしているだけで『上手い』と言われても、『そこまで言わなくてもいい』と思って」
初めての指導方法に直面した選手たちと、監督との信頼関係の構築には、それなりに時間がかかった。
「『負けてもいい。今はいろいろ試して、チャレンジをする時期だから、気にするな』と言われても、日本代表は、常に結果がすべてだと思っていたので……」
長い目で見て成長曲線を描くために、目の前の勝利を取りにいくのではない試合運びも当初はなかなか理解ができなかった。
そんな中で迎えた2017年ドイツでの世界選手権。直前のスペインでのテストマッチで惨敗し、チームの雰囲気は良くなかったという。
しかし、ここで個人の自主自立を育てるデンマーク流の指導法の成果が現れる。このままではいけないと選手間ミーティングを自発的に行い、各々の正直な心のうちを打ち明けあったという。
そうして迎えた世界選手権本番でおりひめジャパンは生まれ変わる。予選リーグでロンドン五輪2位のモンテネグロを破る快挙で決勝トーナメント進出を果たすと、この大会で3位となるオランダを相手に延長戦にもつれ込む大接戦を演じた。