JリーグPRESSBACK NUMBER
ゼルビアとサイバーエージェントの
関係で理解したい「FC町田」の歴史。
text by
郡司聡Satoshi Gunji
photograph byFcMachidaZelvia
posted2019/10/17 18:00
サイバーエージェントとの関係性が注目される町田ゼルビア。クラブが過渡期を迎えている中で、今後どのような歩みを見せるのか。
少年サッカーからトップチームへ。
それはそうだろう。
大半のJクラブは、頂点であるトップのカテゴリーから、下部カテゴリーに広がる形でJクラブとしてのピラミッドが完成している。それを思えば、FC町田という少年サッカーチームをルーツに誕生したJクラブであることこそが、町田の、クラブとしての独自性であり、“アイデンティティー”なのである。
以前、試合後のミックスゾーンでこんなことがあった。
全国放送のサッカー番組の中で、活躍した選手が所属チーム名と選手名を発信するワンシーンでの出来事だった。ある選手が「町田ゼルビアの●●です」と発言すると、クラブスタッフは「FC町田ゼルビア」と言うように、選手に訂正を促し、テレビスタッフへ撮り直しを依頼していた。クラブのルーツである「FC町田」を尊重する姿勢を物語るワンシーンだった。
町田にしかないストーリー性。
もちろん、クラブのアイデンティティーは、マーケティングの側面においても、重要な要素だろう。特にホームタウン町田が置かれた環境を思えば、町田というクラブが54にも及ぶJクラブの中で「one of them」に埋没することなく、存在感を発揮するには、クラブとしての独自性がより必要不可欠な要素として強調される。
川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、FC東京、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ、横浜FC……。ホームタウン・町田市の近隣には、数多くのJクラブがひしめき合っている。ましてや町田のJリーグ参入は2012年と"後発"であることも、ファン層の拡大に向けては、1つのハンディだ。
ちなみに昨年ベースでの1試合の平均観客動員数は、4915人。クラブはシャトルバスの増便・増発によるスタジアムの交通アクセスの改善や駐車場の増設、さまざまなイベントの実施といった集客の努力を続けているものの、今季も大幅な観客動員増には至っていない。
数多あるエンターテインメント産業の中から、サッカーを選択したファン層や、潜在的に眠っている新規層に対して訴求するには、クラブとしての独自性やオリジナリティーが重要であることは言うまでもない。
Jクラブとして組織化されるまでのプロセスが、従来のJクラブとは異なり、少年サッカーチームをルーツとするクラブが、「町田から世界へ」というスローガンを掲げながら、成長していく。そのストーリーにこそ、町田というクラブの価値がある。