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「酷暑=日本有利」は見当違い?
ドーハのマラソンで見た、真の強さ。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byREUTERS/AFLO
posted2019/10/17 16:30
気温40度を超える日中の暑さを避けるため、男女とも深夜に行われたマラソン。日差しがないとはいえ、暑さと湿度は多くの選手を苦しめた。
「金メダル」を獲る意味。
今大会ではトラック種目でも世界のトップランナーのここぞの強さを感じた。今大会では前回王者は特別な赤いゼッケンをつけていた。印象に残ったのはその赤いゼッケンをつけた2人である。
男子3000m障害の決勝では、前回のロンドン大会で勝ったコンセスラス・キプルト(ケニア)が“胸差”で勝利。2位とのタイム差は0秒01。今年は疲労骨折で5カ月ぐらい練習できない時期もあったにもかかわらず、8月に復帰して、ゴール前の最後の最後に胸を出して逆転して金メダルを獲った。
男子5000mでもムクタル・エドリス(エチオピア)が連覇を飾った。彼も今季は調子がいいとは言えない中で、結局は勝った。王者の意地と経験。余裕で勝ったわけではなくて、最後の周回まで競り合う中で意地を見せてくれた。
彼らは勝って「金メダル」を獲ることの意味を知っている。彼らが目指していたのはメダルではなかったのだと思う。
日本人選手は「メダル争い」という言葉をよく使うが、あれは銅メダル、3位でもよしとする考え方。それに対して、絶対に勝ちにこだわることの強さを目の当たりにした。勝たなきゃ意味ない、ダメだという強さが彼らにはあった。
日本勢も国内の争いだったとはいえ、MGCではとにかく勝ちにこだわるレースを経験した。そうした姿勢で臨むマラソンは勉強になっただろうし、それを積み重ねていくことでしか、世界との差は詰められないのだと思う。