今日も世界は走っているBACK NUMBER
「酷暑=日本有利」は見当違い?
ドーハのマラソンで見た、真の強さ。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byREUTERS/AFLO
posted2019/10/17 16:30
気温40度を超える日中の暑さを避けるため、男女とも深夜に行われたマラソン。日差しがないとはいえ、暑さと湿度は多くの選手を苦しめた。
東京五輪で“地の利”は通用しない?
五輪の展望を語るとき、東京の暑さは他と比べて異常だと言われる。だが、なんのなんのドーハも暑かった。異常な暑さだった。東京の気候を日本勢にとっての“地の利”として語るのは無理があるかもしれない、と今大会を見て思った。
日本代表は女子が谷本観月の7位入賞、男子は山岸宏貴の25位が最高だった。MGCに出ていた選手以上に世界との実力差があるのは仕方がない。では、これがMGC上位2、3人だったらどうなっていただろうか。おそらく入賞はできていたと思う。しかし、メダルは厳しい。それが現状だ。
MGC選手でもメダル獲得は容易くない。
特に男子は残り2kmの最後の競り合い、スパートがすごかった。揺さぶりもそうだが、ゴール直前でスピードアップしていく走力や勝ちにこだわるメンタル、トップクラスのアフリカ勢には相当なものがある。日本勢は集団にはついていけたとしても、そこから抜け出す力はまだあるとは思えない。
前回大会4位のカルム・ホーキンス(英国)が、一度先頭集団から離れて追いつき、それでも勝てずに4位だった。彼の走りはすごく参考になった。粘るだけでは勝てない。メダルにも届かない。MGCでいい形で盛り上がってきた東京五輪でのメダル獲得の期待も、やはり厳しいのではないかという気持ちすらしている。
東京五輪では男子世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)も出てくる。メダルを獲るには、彼らが自由自在にレースを操る中で翻弄されずに先頭集団にとどまり続けられるか。抜本的な対策としては、走力をつけていくこと。2時間1分とか2分で走る時代のレースに少しでも絡める力を身につける必要がある。
女子に関しては、MGCを制した前田穂南が出ていればメダルは獲ったかもしれない。7位入賞した谷本観月との走力差を考えれば、銅ぐらいに絡んだ可能性はある。