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日本のクラブ初のアジア王座獲得。
A東京の成長がBリーグを強くする。
text by
小永吉陽子Yoko Konagayoshi
photograph byALVARK TOKYO
posted2019/10/04 11:30
ワールドカップでの戦いを終えて合流した田中大貴。アレックス・カークに次いでチーム2位となる平均28.7分の出場で優勝に貢献した。
国によってスタイルが全く違う。
持ち前の対応力を発揮したのは、勝ったほうが準決勝へと進出する重要な一戦となった3戦目の現代モービス戦からだ。
その前の2戦目にはレバノンのアル・リヤディにブザービーターを食らって1ゴール差で惜敗していたが、敗因は細かい判断ミスが重なったこと。そのミスを修正すべく、現代モービスが誇る代表歴のある2ガードを機能させないディフェンスで先手を取ったのだ。
同じアジアとはいえ、この大会では質が違うチームとの対戦ばかりである。アル・リヤディはディフェンスではチェンジングを執拗に仕掛け、オフェンスではピック&ロールから個の力を押し出しながらも、中東らしい荒々しさもあるチーム。
対して現代モービスは外国籍のインサイドを軸としながらも、韓国特有のシューターを生かすための質の高いスクリーンプレーを連続で展開する力がある。
こうしたタイプが異なるチームに対し、抑えどころをつぶしていける我慢強さこそがA東京の強みだった。このタフなゲームを制した自信から、準決勝以降はさらに調子は上昇していく。
全チームで唯一40%に乗った3P。
準決勝のナフト・アバダン戦では、イラン代表に名を連ねる強力なインサイド陣をカバーし合う激しいディフェンスを見せ、グループフェーズの再戦となった決勝のアル・リヤディに対してはリバウンドで競り勝って主導権を終始握った。
ともに相手の戦意を喪失させてからは走力で押し切り、自分たちのゲームプランを遂行したのだ。外国籍選手が登録2名というルール上、6日間で5試合という過密日程を9選手だけで乗り切ったタフな戦いぶりは、紛れもなくアジア王者の姿だった。
カークと田中が個人賞を受賞したが、チームを支えていたのは、ハッスルプレーと要所の得点で軸となった小島元基と、タイムリーな3ポイントでチームを勢いに乗せた新加入の須田侑太郎だった。そして新外国籍選手のミラン・マチュワンが試合をするごとにチームに馴染み、シュート力を発揮したことも武器になった。
小島は「今シーズンは雄大(馬場)が抜けるのでオフェンスに力を入れて練習をしてきた」と語るだけあり、A東京は3ポイントの確率が唯一の40%(40.5%)に乗ったチームだった。馬場雄大がNBA挑戦で抜ける今季、これまでとは違う新しいオフェンスの形を展開できたのは収穫だろう。