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ランパード・チェルシーを包む、
第1期モウリーニョと同じ高揚感。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto Press

posted2019/09/22 09:00

ランパード・チェルシーを包む、第1期モウリーニョと同じ高揚感。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

現役時代は攻守に幅広く関与するタイプだったランパード。新監督としてチェルシー再建に挑んでいる。

カンテらが復帰してくれば……。

 前回グループステージで敗退した2012-13シーズンには、同じくクラブのレジェンドとして先輩に当たるロベルト・ディマッテオの首が前半戦で飛んでいる。

 ランパード体制はバレンシアに敗れたとはいえCLでまだ5試合を残し、プレミアでも6位に浮上したばかり。リバプールのユルゲン・クロップ、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラという国内トップ2の指揮官両名に次いで首が安泰と見られているが、開幕当初と同じ解任有力候補へUターンする危険性は常につきまとっている。

 しかし、逆にポジティブなムードが増す要素もある。カンテのほか、昨季最終ラインの要に成長したアントニオ・ルディガー、昨季ユース出身のレギュラーを予感させた18歳のFWカラム・ハドソン・オドイが、戦列復帰に近づいている。

 待望の新体制ホーム初勝利が実現すれば、それが9月25日に4部相当のグリムズビーと戦うリーグカップ3回戦だったとしても、祝勝の喜びがホームに充満し、それが起爆剤となるようにさえ思える。

独自のアイデンティティ確立のために。

 だからこそ、「心温かい」ファンはマイナス面に顔をしかめるのではなく、しっかりと目を開いてプラス面を見つめ続けるべきだ。そうすれば今季タイトル獲得が叶わなかったとしても、サッカースタイルにしても、生え抜きの主力メンバーにしても、クラブが求めて止まない「独自のアイデンティティ」という無形のトロフィーを手にするための下地が築かれる。

 その指揮を執る新監督を、とことん信じることだ。

 バレンシア戦のスタンドでは、負傷退場したマウントの代役として、実際に投入されたペドロ・ロドリゲスではなく、クリスティアン・プリシッチを望む声を聞いた。しかし、CLでの急遽出動に21歳の新ウインガーより経験豊富なサイドアタッカーを選んだ指揮官の判断は理にかなってはいた。

 国内外で苦しい戦いが続いても、辛抱を忘れて、もともと堪え性のないオーナー以下のフロントに、ファンの支持率低下という監督交代への表向きの理由を与えてはならない。開幕戦からポイントは落としていても、取り戻したままでいるチームとファンの「和」を損なってはいけない。

 チェルシーの「12人目の選手たち」は、「ギブ・ピース・ア・チャンス(平和を我等に)」ならぬ「ギブ・ランプス・タイム(時間をランパードに)」をスローガンとすべきだ。

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