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大迫傑の腕振りは「水のように」。
米国人コーチが明かした指導と進化。 

text by

酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byMasato Sakai

posted2019/09/14 19:00

大迫傑の腕振りは「水のように」。米国人コーチが明かした指導と進化。<Number Web> photograph by Masato Sakai

オレゴンで練習を積む大迫。日本記録保持者として挑むMGCでは大本命に推される。

徐々に改善点は小さな部分へ移行。

 大迫のワークアウトは週に3回。2回は比較的きついウエイトトレーニングを行い、もう1回は補足的なセッションを他のトレーニングと組み合わせているという。

 ワークアウトは主に弱点にフォーカスするため、数カ月に1度は、トレッドミルの3Dモーション分析を行い、筋肉の動き、足圧データなどをチェックしている。

 5年ほど前からワークアウトを担当しているデイビッド・マッケンリーは、大迫の取り組みをこう説明する。

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「ランナーの弱点がわかれば、ウエイトトレーニングやドリルなどで具体的な対策を取ることができます。だから最初は、スグルと色々なことに取り組みました。彼の動きは無駄がとても少なくなってきたので、本当に小さな点にフォーカスするようになりました」

「フォーカスしているのは耐久性」

 取材に訪れた日は、30種目ほどあろうかというドリルを大迫は次々とこなしていた。そして日本の長距離ではあまり行っていないような重量のスクワットなども実施していた。

「マラソンがメインになってから、主にフォーカスしているのは、耐久性を高めることです。できるだけ楽に、最大限の力を地面に伝えられるようになってほしい。

 それは単に重いウエイトをあげるというものではありません。レース中に疲れた時も良い姿勢を保ち、正しい走り方をすることが大切です。さらにレース後半の筋力が重要になってきます。20マイル(32km)まで速く走れる選手はたくさんいても、最後の約6マイル(約10km)を速く走れる選手は多くありません。彼がマラソンに移行して以来、その部分に力を入れています」

 大迫のボディは他の日本人ランナーと比べて、筋肉の隆起が目立つ。その裸体はスリムなのに力強い印象を与えるほどだ。鍛え上げられた肉体はレース終盤でもフォームを崩さないことに役立っている。そして、MGCに向けたトレーニングは過去4回のマラソンとほぼ同じだとジュリアンコーチはいう。

「東京マラソンは途中棄権しましたが、何をすればうまくいくのか理解しているので、それほど変える必要はありません。失敗したとしても、自分たちのやっていることに自信があればまた立ち上がって続けるだけです。今回もボルダーで6週間ほど、かなりキツめのメニューを行います。追い込んで、辛い思いもするでしょう。どんな状況にも耐えられるようにするのが目的です。私たちは一貫性こそが強いランナーを育てると考えています」

【次ページ】 「どんな状況でも勝てる力」をMGCで発揮する。

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