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浦和レッズは“硬派”をやめたのか。
「観客1万人減」からの新たな挑戦。
 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byURAWA REDS

posted2019/09/13 11:40

浦和レッズは“硬派”をやめたのか。「観客1万人減」からの新たな挑戦。<Number Web> photograph by URAWA REDS

さまざまな企画が催される埼玉スタジアム2002の南広場。この日は埼玉高速鉄道とコラボしたミニSLが多くのちびっ子たちを乗せて走っていた。

女性、親子、学生にサラリーマン。

 ちなみに話を聞いたのは7月31日、鹿島アントラーズ戦でのタイミングだった。話を聞き終わるとキックオフ直前だったので、ウェルカムシートに足を運んでみた。

 ほぼ埋まっているウェルカムシートでは、ピッチにスマホを向けて写真を撮る女性もいれば、ご飯を食べながらのんびり見ている親子連れ、そしてチャンスになれば熱い拍手と声援を送る学生たちやサラリーマン勢と多種多様だった。

 そして地味かもしれないが、コンコースには「ウェルカムシートはこちら」という張り紙も貼ってあった。こんなご新規さんに親切な観戦環境を提示することこそ、星野さんが表現した「多面性」に当たるのだろう。

 そして南広場のイベントを強化していることも、間口を広げる試みといえる。

「スタジアム内ではこれまで同様、サポーターの皆さんと一緒に戦う空気を作っていきますが、外、つまり南広場は色んな方が楽しめる空間にしましょう、と。“チケットをもぎった先は戦う場所”という線引きをきちんとした上で、こちらではどんどん楽しいことをやろう、という考えです」(星野さん)

元“中の人”が企画する南広場。

 そんな南広場のイベントを取り仕切っている、競技運営部の関口勇太さんにも話を聞いてみる。関口さんも根っからのイベンターというわけでなく、元はゴリゴリの“スタジアムの中の人”だった。

「試合日はスタジアム内でチームに近い立場で、彼らがプレーしやすい環境を整えることを業務にしていました。なのでスタジアム内での選手の躍動する姿やファン・サポーターの熱気ある雰囲気は知っていましたし、直接肌で感じる場所で仕事をしていたんですが、お恥ずかしい話、『来場者の皆さんがどう来て、どう楽しんでいるのか』というのがまったくわからなかったんです」

 そんな素人のような状態だった関口さんだが、クラブの間口を広げるタスクを任されたからには全力を尽くしている。「多くの人に『浦和レッズ、毎試合、面白いことやっているよね』と思わせたい」と意欲を語る通り、これまでのレッズにはなかったイベントを仕掛けている。

 前述の磐田戦では、東武動物公園や埼玉高速鉄道とコラボしてミニ動物園やミニSLを走らせるなど、10個以上にもわたるイベントを手掛けるなど、試みは実を結びつつあり、先述の『Go Go Reds!デー』でも5万人以上の来場者を記録した。

【次ページ】 ピッチ外で「また来よう」を増やす。

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