マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園取材では声より表情を見る。
球児の“ほんとの顔”が知りたいのだ。
posted2019/08/14 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
監督さんや選手たちとの「囲み取材」は甲子園大会の場合、試合前と試合の後、必ず1回ずつ行われる。
試合後の囲み取材は、記事を作るのに直接的な材料になるので、ピンと張り詰めた緊張感が漂う。
すべての記者の方たちにとって、“勝負”の時であろう。
お立ち台には監督さんとゲームのキーマンとなった選手が上がり、そのまわりをたくさんの記者たちが取り巻いて、Q&Aが始まる。
少しでも話を聞き取ろうとして、みんな、語り手に近づこうとするから、体がぶつかり合い、手にするスコアブックが顔に当たり、メモをとる肘で胸や腹を突かれる。人垣の中は、結構な「肉弾戦」となる。
監督さんたちは、わりと取り囲むみんなに聞こえるように話してくれるから、内容が耳に入ってくる。しかし選手のほうはどうしても、質問者に向かって話をしがちなので、なかなか内容が聞き取れないことが多い。
話すときの表情の変化が面白い。
そんな中で、私は、話を聞き取ろうとするより、話している選手の表情をじっと見ることにしている。
話す内容より、話しているときの表情の変化のほうが興味深い。
たとえば、問われることにいちいち反応して、安心したように笑ってみたり、ちょっとひねった質問には首をかしげて困った顔で「う~ん」と考え込んでみたり……。そんな選手がいれば、もしかしたら会話の豊富な家庭で育って、いろんなことを相談しながら暮らしている家族なのかもしれない。そんなことを想像してみる。
「答え」はどちらでもよいのだ。