「ほんとのところ」に迫りたいから。

　ならば、語ってくれる中身が聞こえなくてもいいんじゃないか。

　むしろ、語ってくれる表情のあれこれから、ほんとに考えていることはどんなことなのか。

　それを推量したほうが、「ほんとのところ」に迫れるんじゃないか。迫れるつもりになれるんじゃないか。

　そう思い始めて、もう10年近くなる。

　グラウンドで展開する実戦のプレーを見ながら、この選手、どんな顔してるんだろう、どんな青年なんだろう……そんな興味に引かれて、記者席から下に降りて、囲み取材の人垣のいちばん外側から、その受け答えの様子をじっと見つめる。

　そして、ほんとのところはどうなんだろう。そんな「推量」を繰り返してみる。

　答え合わせは、数年後にもなることがあるから、私が新聞記者なら、すぐクビだ。

　一風変わったそんなやり方が、私の「取材」なのである。