野球善哉BACK NUMBER
仙台育英に漂う悲願達成の気配。
7、8、9回の強さが支える安定感。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/08/14 14:10
初戦は圧勝、2戦目は接戦。2つの強さを見せた仙台育英はどこまで勝ち上がるだろうか。
仙台育英を支える終盤の異様な強さ。
しかし、仙台育英は決して慌てなかった。
4回裏、反撃のきっかけを与える失策をした遊撃手の入江はこう話す。
「少しバウンドが変わってしまって、うまく合わせられなかった。ただ、落ち込むことはなかったです。チームとして終盤3イニングをどう戦うかの練習をしてきたので、前半戦で負けていたり、劣勢な展開になっても問題なくプレーできました。そういう練習をしてきたので、それが自信になっていると思います」
終盤3イニングの練習――。
仙台育英の強さの源になっているのは、日頃の練習で行うこの「終盤3イニングの紅白戦」なのだ。
終盤に自信があれば、チームは崩れない。
1年生捕手の木村航大は、この実戦練習で勝ち方を知ったと語る。
「試合に勝っている展開で迎えた3イニング、ビハインドの時と想定が2つあるんですけど、試合展開によって配球は異なってくるので、その練習をしてきました」
終盤3イニングの練習では、試合の決着を意識したインサイドワークが捕手に求められる。チームとしてビハインドならば、いかに逆転していくための流れを作るか。
一方勝っているときは、いかに何も起こさせずに勝利を収めていくかを考えて戦うという。終盤の戦いを熟知することで、勝利へのシナリオが描かれていくというわけである。
終盤3イニングの試合運びに自信を持つことは、さらなる副産物を生んでいる。この日も6点リードから5失点して1点差に詰められたのは4回だったが、終盤に自信があるからこそ落ち着いて戦えるのだ。主将の千葉蓮はこう語る。
「練習の集中力が切れてきた時に終盤3イニングの紅白戦をやることが多くて、それが持ち味になっています。終盤に強いのはもちろん、どんな展開になっても焦らずにできている。今日は5点を失いましたけど、そこから徐々にやっていこうと誰も雰囲気が落ちることなくやれたと思います。1点勝っていましたし、勝負するのは終盤なので」
チーム全体が慌てなかったのは、そうした裏付けがあるからなのだ。