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佐賀北・久保貴大監督は変わらない。
選手の不信感を信頼に変えた2年間。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2019/08/06 18:30
神村学園に敗れ、整列する佐賀北の久保監督(右端)ら。
選手からの辛辣なコメント。
佐賀北では毎日、全選手が日誌を提出する。それを監督、部長、副部長の3人でチェックするのだ。宮崎もことあるたびに久保の采配ミスを突いた。
「意味わからん! って。なんでこんなところでスクイズするんかとか、なんでここでピッチャーを代えるのか、とか。こんなんで勝てるわけないと思ってましたね」
だが、久保はそうした辛辣なコメントに対しても一切、言い訳をしなかったという。どんな不利な状況に立たされても無表情で自分の投球を続けた久保の姿を思い出す。
そんな態度が少しずつ選手の心を溶かした。
昨年冬は、こんなこともあった。宮崎の回想だ。
「30種類くらいのメニューをこなす超きついサーキットトレーニングがあるんですけど、それに入ってくれて。黙々とこなす姿がかっこよかったですね。あれから久保先生と選手の距離が一気に縮まった気がします」
しかし、久保にその意図を問うと、こうおどけた。
「まあ、思い付きで、入ってみよう、と。次の日、とんでもないことになりましたけど」
勝っても負けても不変。
この夏の佐賀大会は、代打などの采配がことごとく的中。宮崎は「神がかっていた」と振り返る。
「采配が変わったというより、自分たちが久保先生のことを信頼し、応えてやろうと思うようになったからだと思う」
そんな話を向けても、久保は相変わらず久保だった。
「どうなんですかね。わからないですけど」
ミスを指摘されても言い訳しない。反対に褒められても安易に乗っからない。それが久保である。
監督としての甲子園デビューは、2-7で敗戦。だが、勝っていたとしても、試合後の久保の表情はさほど変わらない気がした。
勝っても負けても不変。それが久保の投手としての強さだったし、監督としての強さでもある。