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佐賀北・久保貴大監督は変わらない。
選手の不信感を信頼に変えた2年間。
posted2019/08/06 18:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
ベンチでの姿と、12年前のマウンドでの姿が重なった。
神村学園と対戦した佐賀北は初回、ミスが重なりいきなり3失点。一塁へ送球ミスを犯した三塁手の宮崎翔大は、監督の久保貴大のそのときのベンチ内での様子をこう振り返る。
「冷静で、大丈夫、大丈夫、って。安心させてくれましたね」
2007年夏、佐賀北のエースとして全国優勝したときのマウンドにおける久保も、同じだった。どんなに不利な状況に立たされても、淡々と「職務」を遂行した。
元チームメイトで、現在は同じく佐賀県内で唐津工業の監督を務める副島浩史は、現役時代の久保をこう評する。
「久保は決めたことを絶対、やり通すんです。練習後、走ると決めたら、絶対にさぼらない。どんなことでも毎日って、なかなかできるもんじゃない。マウンドでも同じ。勝ち負け関係なく、投げ抜くと決めたら、とにかく最後まで投げ切る。大学でもいろんなピッチャーをみましたけど、こんなにとことんやるタイプはいなかったですね」
日本一に導いた監督は副部長に。
選手時代はプレーヤーの鑑のような存在だった久保だが、監督になってからはなかなか選手の理解を得られなかった。
監督に就任したのは、2017年夏の大会後だ。日本一に導いた百崎敏克は、それと同時に副部長に退いた。そのときの心境を宮崎はこう思い出す。
「百崎先生と野球をするために佐賀北に来たのに、なんで代わっちゃうんだという感じでしたね」
久保と選手の関係は、極度の不信から始まった。そのような状態で、結果が出るはずもなかった。初めての夏となった昨年は初戦で敗退。選手の不満が噴出した。