甲子園の風BACK NUMBER
地方大会の投球回数が甲子園に影響?
最多は1人で60回を投げた投手も。
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph byKyodo News
posted2019/08/05 20:00
開会式のリハーサルも終わり、あとは開幕を待つだけ。全ての球児に夏を全うしてほしい。
明徳義塾も甲子園に向け万全。
明徳義塾は試合数が4試合と少ないうえに、決勝戦は大会初登板の新地智也が先発して完投勝利。最多登板イニングはリリーフで3試合10回を投げた山田圭祐で、初戦が1回、中8日空いた2試合目が5回、中2日空いた3試合目が4回という内容。こちらも大きな疲労の心配はなさそうだ。
ただ、戦い方としては基本的には継投だろうが、新地の先発のように予想外の起用もあって読みにくい。甲子園では百戦錬磨の馬淵史郎監督がどんな起用をしてくるかが気になる。
以上3校は、それぞれ中身に違いはあるものの、投手陣の運用にはしっかりとした戦略が感じられ、行き当たりばったりの起用、継投という印象はない。30%以下という数字は、やはり計画に基づいた投手陣の準備と運用がないと出ないのだろう。
明石商業は投手陣の連投ゼロで突破。
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ただ、これらのチームは前述した通り、複数投手起用と継投が戦い方の基本。個々の疲労が少なくなるのは当然ともいえる。注目したいのは、やはり「軸となる能力の高い投手が存在しつつ、その投手の負担が少ない」「複数の能力の高い投手で負担を分け合っている」チームだ。
当てはまりそうなのが明石商(兵庫/43.2%)、仙台育英(宮城/36.6%)、習志野(千葉/35.9%)、智弁和歌山(和歌山/33.3%)といった、軸になり得る好投手がいながら30%台から40%台前半の数字を記録しているチームだ。なかでも興味深いのが明石商と智弁和歌山である。
明石商の最多イニング登板は、選抜で評価を高めた2年生エース・中森俊介ではなく、選抜後に台頭した3年生の杉戸理斗。7試合中、杉戸が3試合先発、2試合リリーフで24回2/3。中森が3試合先発、2試合リリーフで21回2/3という内容で、杉戸が総イニングの43.2%を投げた。
準決勝と決勝のみ連戦だったが、杉戸と中森がそれぞれ完投したため投手陣の連投はゼロだ。
ベスト4に進出した選抜では、3年生で前年秋に主戦格の1人だった宮口大輝が指の故障を抱えていたことも影響して、中森が4試合中3試合で先発完投。大差のついた1試合も中森がリリーフで5回2/3を投げるなど、中森の偏重起用が目立ったが、今夏はそれを抑える結果となった。
狭間善徳監督は、意識して甲子園での上位進出も見すえた運用をしたのだろうか。
真意はさておき、杉戸、中森のほか、兵庫大会初戦で完封勝利を挙げた溝尾海陸やリリーフで登板した安藤碧、さらには宮口もいる投手陣は、「軸となる能力の高い投手が存在しつつ、その投手の負担が少ない」と「複数の能力の高い投手で負担を分け合っている」のいずれも当てはまりそうな贅沢さ。甲子園での投手起用も楽しみである。