相撲春秋BACK NUMBER
父の名前を継ぎ、祖父を仰ぎ見る。
二代目琴ノ若が背負う3つの時代。
posted2019/07/09 07:00
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Shoko Sato
大相撲名古屋場所が始まった。大関の貴景勝が休場との苦渋の決断をし、満を持して出場した休場明けの白鵬がV43を狙う。先場所初優勝した前頭筆頭の朝乃山は、その真価を問われる場所ともなり、熱戦が期待される名古屋場所だ。
幕内の土俵だけではなく、今場所は幕下力士たちの闘いも、ことさら熱い。西幕下2枚目の豊昇龍、同じく6枚目の納谷、7枚目の塚原、東幕下8枚目の琴手計と、いずれも高校相撲でならした若手が幕下上位まで番付を上げて来た。
彼らに刺激を受けたというのが、今場所新十両として話題の二代目琴ノ若――祖父に元横綱琴櫻、父に元関脇琴ノ若を持つ21歳の”サラブレッド”だ。
「大学に進んでいれば今年で4年生」
2015年11月の初土俵以来、5場所で幕下に昇進するも、約2年半のあいだ足踏み状態が続いた琴ノ若(当時 琴鎌谷)。師匠でもある父曰く、「ここぞというところで勝てない」と歯がゆくもあったのだが、じわりじわりと番付を上げ、5月の夏場所では東幕下2枚目の地位で4勝3敗。晴れて新十両昇進を果たし、父の名を名乗った。親子で臨んだ会見で、二代目琴ノ若はいう。
「入門後すぐには、祖父や父のことを意識したりも、多少はありました。でも注目される後輩が入って来て、そっちに注目が行ってくれたので……」
同じ埼玉栄高校相撲部出身の2年後輩にあたる大鵬の孫、納谷。朝青龍を叔父に持つ豊昇龍。それぞれの血統からも、このふたりが注目の的になり、琴ノ若のプレッシャーは、いささか軽くもなっていたようだ。さらに、
「大学に進んでいれば今年で4年生になっています。自分の同級生たちが入門してくる時、自分がまだ幕下だったら、プロに入った意味がないと、余計に早く上がりたいという気持ちにもなりました」