才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
スキージャンプ・高梨沙羅の新境地
「強い気持ちを持つことが勝利につながる」
posted2019/07/03 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Kiichi Matsumoto
圧倒的強さを見せる一方、大舞台では表彰台を逃し、悔しい思いも経験してきた。2014年のソチオリンピックで4位に終わった直後には、競技を辞めたいとまで思っていたという。
22歳となった現在、彼女が辿り着いたメンタルの重要性を語る。
競技人生を振り返っても、ソチオリンピックが終わった直後が一番辛かったです。辞めたいとも思いましたが、結局どうしても競技のことについて考えてしまい、戻ってきてしまう自分がいた。やっぱり自分にはスキージャンプしかないと思いましたし、ずっと情熱を注ぎ込んでいたので、また絶対にこの場所に戻ってくるんだという強い気持ちを持って、仕切り直すことにしました。とはいえ、落ちている気持ちをまずは普通の状態まで引き上げるところから始まったので、かなり時間がかかりました。
スキージャンプは精神面が重要な競技です。体と心と技術。3つのバランスが取れるようにすべてを仕上げて、しっかりとベースを作っておかないと試合で結果を残すことはできません。
そのなかで、私のウィークポイントとなるのがメンタルです。うまくいかないとき、ミスをしてしまったときに自信を持てなくなってしまう。今まで積み重ねてきた練習を試合にぶつけて、少しでもミスが出ると、これでいいのかなと不安な気持ちが出てきてしまい、さらにジャンプを狂わせて、ミスをしてしまう。それでも自信をつけるには練習をするしかありません。特にソチが終わった時期は、練習あるのみだったと思っています。
時速90kmの中でミリ単位の調整。
スキージャンプの練習は1度飛んで、スタート地点まで戻るのに結構時間がかかります。その間に自分の中で作戦を練って、考えて、スタート地点に立ったら、自分の中でまとめたものを次のジャンプで試していく。スタートゲートに上がるまでにしっかり考えておかないと、ただ飛んでいるだけで無駄な時間になってしまうんです。
スキージャンプのスピードは時速90kmにもなります。その速度の中で、ミリ単位で調整をしなければいけない。コーチやビデオを撮ってくれているスタッフのアドバイスももちろん大切なのですが、実際に戦っているのは自分ですし、自分の感覚というのはかなり重要です。瞬時にこれをやればいいのかとか、こういうことなのかなと自分で考えたことを、きちんと試せるようになっていかないといけない。それによって練習の質は大きく変わります。