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ユーベが“昨日の敵”サッリを招聘!
ジャージを愛する親分の名門改革。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/06/26 11:15
サッリは生まれ故郷のクラブ、ナポリを2015年から'18年まで指揮。リーグ年間2位、3位、2位といずれもユベントスと激しく優勝を争った。
サッリの正直な言葉に満点評価。
故郷と古巣への愛情を隠さないサッリの答えは、これ以上ないほどストレートだった。過去を否定せず、あえて批判されるであろう部分をさらけ出した言葉に、会見場の記者たちは固唾を飲んで聞き入った。
サッリはナポリについて言及するとき、目を伏せた。ウソを言っていないからこそ正面を見れなかったのだ。
その上で「ここでも110%の力を尽くすと約束する。チャンピオンズリーグにはユーベと同じレベルのライバルが8つか9つはあると思うが、追いかけるべき目標だ」と述べた。
翌日、トリノの地元紙『トゥットスポルト』は、サッリの会見を「真摯で明快。多くのユベンティーノたちは彼の正直さを好ましく捉えた」と、ほぼ満点評価を与えた。天晴、この男は信用できるとみなしたからに他ならない。
ユベントスがサッリ招聘に踏み切った理由。
前任者アッレグリは指導者個人として前人未到のスクデット5連覇を成し遂げながら、CLのタイトルにはついに届かなかった。
彼の退任会見で、アニェッリ会長は両者の契約解消を“男女間の自然消滅”に喩えたが、イタリア随一の名将をあえて切ってまで、異端派サッリを招いたからには、ネドベド副会長やパラティチSD以下フロントにも相応の覚悟ありと見て然るべきだろう。
無精髭で日に80本もタバコを吸うヘビースモーカーのサッリとその攻撃的な機動サッカーのスタイルが、格式を重んじ守備第一をモットーとするクラブの伝統的価値観に相反することは明白だ。
それでもなお経営陣がサッリ招聘に踏み切ったのは、悲願の欧州制覇に向けて、あえて異分子を取り込むことによってユーベのサッカーに爆発的な化学反応が起きることを期待しているからに他ならない。