来た、見た、書いたBACK NUMBER
チケット高騰、観客4640人の日も。
コパで見る南米サッカーの経済格差。
posted2019/06/25 07:00
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
Getty Images
ブラジルで現在、開催されているコパ・アメリカの大会スローガンは「Vibra el continente.(南米大陸を揺るがせろ)」。
ピッチ内では熱い戦いが続いているが、その一方で観客動員と国内の盛り上がりは今ひとつの状況が続いている。
サッカーを愛する大衆には手が届かない大会――。
その予兆は6月14日にサンパウロで行われた開幕戦のブラジル対ボリビア戦に現れていた。
開幕戦は「6万枚完売」のはずだが……。
試合会場のモルンビースタジアムでは当初6万枚のチケットが完売した、と発表されていたが、試合当日は空席が目立ち、実際に来場したのは4万6342人のサポーターのみ。ブラジルでは当日の観客数だけでなく、入場料収益も電光掲示板で発表されるのが一般的だが、この試合はワールドカップや、リオ五輪を除けば、ブラジルサッカー史上最高額となる2200万レアル(約6億1600万)という巨額な数字が話題を集めたのだ。
準決勝と同じ金額設定がされていた開幕戦のチケットはもっとも安いチケットが190レアル(約5300円)で最高額は590レアル(約1万6500円)。近年、経済的に苦境が続いているブラジルでの最低賃金が月に998レアル(約2万8000円)であることを考えれば、およそ庶民層に手が届くチケットではないのだ。
そんな“セレブ”たちが集った開幕戦のスタジアムは、やはり熱気を欠いていた。
前半をスコアレスで折り返すと、場内からはブーイング。試合後のミックスゾーンでチアゴ・シウバは「サポーターの気持ちは分かる。高い入場料を払っている人は、見応えのあるショーとゴールを見に来ているのだからね」と理解は示したものの、開幕戦のスタジアムは3度のゴールシーンで沸いたのみだった。