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ユーベが“昨日の敵”サッリを招聘!
ジャージを愛する親分の名門改革。
posted2019/06/26 11:15
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
サッカーの指導者は“スーツ派”か“ジャージ派”に二分される。
昨季、スクデット8連覇を達成した名将マッシミリアーノ・アッレグリはかつてこう発言した。
「監督はクラブの顔。試合でスーツを着ない指導者には罰金を科したいくらいだ」
格式と伝統を重んじるイタリアでは、サッカー監督へのファッションチェックが厳しい。一度、専門家がジャージ姿で指揮をとる監督たちをボロクソに採点していてたまげたことがある。
ジャージと咥えタバコがトレードマークの異端派指導者マウリツィオ・サッリが、名門ユベントスの新指揮官に就任した。20日の就任会見に、サッリは濃紺のクラブ公式スーツにネクタイという出で立ちで臨んだ。サッリの反骨精神も権威に屈したかと思いきや、新指揮官は言葉を選びながらはっきりと言った。
「グラウンドにスーツで行くのは御免こうむりたい。確かに試合以外の公式行事でのスーツ着用義務は契約書に書かれてある。だが、ピッチの上ではジャージがいいんだ」
名門クラブの格式や圧力に屈するか、我流にこだわり自然体で指導することを認めさせられるか。新指揮官サッリはチーム作りの本番を前に、早くもユベントスの指揮官としての分水嶺に立っている。
かつては“敵”だったユベントスへ。
昨季、チェルシーを率いてUEFAヨーロッパリーグで優勝したサッリだが、ユベントスにとっては1年少し前まで熾烈なスクデット争いを繰り広げた恐るべき敵将だった。
3シーズンもの間、ユーベを不倶戴天の敵と定め、いわゆる放送禁止用語をまくし立てながら、ナポリに檄を飛ばし、王者をあと一歩のところまで追い詰めた。
1時間にも及んだ就任会見の中で、サッリは当時と現在の心情を問われた。
彼は言葉を濁さなかった。
「ナポリの監督をしていた3年間、毎朝目が覚めてまず考えるのは、どうやったらユーベをやっつけられるか、ということだった。私はユーベを倒すことに110%の力を注いできた。中指を立てた。私はここで憎まれるかもしれん。しかし、クラブの目標に向けて心血注いだ仕事ぶりについてはきちんと評価してほしい」