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避けれたはずの内角ツーシーム。
大谷翔平に見えた“もどかしさ”。 

text by

四竈衛

四竈衛Mamoru Shikama

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photograph byGetty Images

posted2019/06/01 11:00

避けれたはずの内角ツーシーム。大谷翔平に見えた“もどかしさ”。<Number Web> photograph by Getty Images

死球を受けた右手薬指は幸いなことに骨折などもしておらず、大谷は翌日もスタメンに名を連ねると安打を放った。

手術後、ぶっつけ本番。

 そこには、打者の感覚として、見過ごせない要素が含まれていたのではないだろうか。

 昨年10月の手術以来、エンゼルス首脳陣は、大谷の復帰プランに関して細心の注意を払い続けてきた。今季は打者に専念する一方で、来季は投手としてもマウンドへ戻る。起用法のみならず、リハビリにしても「二刀流」は前代未聞。打撃と投球の関連性にも前例がないだけに、練習メニューにしても慎重にならざるを得ない。

 打者として実戦段階に進んでも、マイナーの試合でプレーすることなく、「ライブBP」を繰り返したのも、常に首脳陣やメディカルスタッフが目の届く場所でチェックするためだった。

 通常、故障のないベテラン野手でも、開幕まではオープン戦で試行錯誤を繰り返し、実戦感覚を取り戻すまでの行程に時間を費やす。それでも、結果につながるとは限らない。

 今季の大谷の場合、手術直後でありながら、実戦抜きのぶっつけ本番で公式戦に挑む、特種な過程を歩んできた。

「反応自体は良くなってきている」

 負傷翌日、第3打席に安打を放った大谷は、率直な思いを口にした。

「反応自体は良くなってきていると思うんですけど、結果的に安打になってないというところで言うと、もう少しアプローチの仕方はあると思うので、悪くない打席もありますし。いい当たりだからといって、すごく良かったというわけではないです」

 本塁打や安打が出れば、誰もが称賛する。

 ただ、懸命に研ぎ澄まそうとしている感覚が、実際の打席で体の動き、反応と一致しているか、否かは、本人にしか分からない。

「反応自体は良くなってきていると思うんですけど……」との言葉の裏には、少なからず、もどかしさも見え隠れする。

 内角への厳しい球を、何事もなかったかのような表情で避けられるようになった時、大谷は本来の感覚を取り戻しているに違いない。

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大谷翔平
ロサンゼルス・エンゼルス

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