フランス・フットボール通信BACK NUMBER
リーグアンで圧倒的強さのPSGは、
なぜフランス国民に愛されない?
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byGetty Images
posted2019/05/31 07:30
イブラヒモビッチを始め、世界的なタレントを擁してきたパリ・サンジェルマン。リーグでは無類の強さを発揮しているが……。
現代サッカーの最大の目標。
――あなたはタイトルの価値は変わらない。違いは人々の気持ちだと言っていますが……。
「1976年の最後のタイトル獲得で感じた気持ちは、'67年に最初にリーグ優勝したときと同じぐらい強かった。それは自分たちの時代が終わりを迎えつつあることを意識していたからだ。
今日、私は自分をPSGのだれかに置き換えることはできない。だから彼らについては何もわからないが、どのシーズンも彼らの最大の目標はチャンピオンズリーグだ。私たちのときはそうではなかった」
「今のPSGはどうだ。何の実績もない」
――あなたの不満は何ですか。2位に大差をつけて優勝したことですか。それとも他のチームが入れ替え戦にしか関心を向けないことですか?
「不満に思うのは毎シーズン4~5節を残して優勝を決めるチームが、同じメンバーとチーム力を維持しながらCLの準々決勝にすら進めないことだ」
――しかしリーグは完全に支配しています。偉大なチームと呼ばれるためには国際レベルでのパフォーマンスが不可欠ということでしょうか?
「今日、A代表をはじめとする代表チームの成功に我々は目を奪われている。だがその国のサッカーの真の価値は、クラブのレベルにもよる。
サンテティエンヌはチャンピオンズカップの準決勝と決勝に一度ずつ進んだ。ランスは決勝に2度進んだしマルセイユもそうだった。
今のPSGはどうだ。何の実績もない。
人々がベルナール・タピ(当時のオリンピック・マルセイユ/OM会長)に何を望んだかを思い出せばいい(訳注:5月19日掲載回を参照)。
彼はちょっと支離滅裂なところがあって、OMが獲得したタイトルの幾つかは疑問符付き(訳注:モナコ監督だった当時のアーセン・ベンゲルは『マルセイユにタイトルを盗まれた』と公式の場でOMを糾弾した。名古屋に来る以前のベンゲルは、OMにとって不倶戴天の敵だった)だったし、八百長事件も避けて通れないが、それでも彼のOMはCL制覇という快挙を成し遂げて国中の共感を得た。とりわけPSGと対戦した際には……。
昨シーズン、私はパルク・デ・プランスでPSG対モンペリエ戦を観戦した。本当に酷い試合だった。それはピッチの上だけに限らず、ピッチ外やスタンドもそうだった。うわべだけのはったりで……。そう、すべてがはったりだった。そのうち喜びなど何も得られなくなってしまうだろう。だが、それもまたフランスのクラブの歴史が望んだことでもある」