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リーグアンで圧倒的強さのPSGは、
なぜフランス国民に愛されない?

posted2019/05/31 07:30

 
リーグアンで圧倒的強さのPSGは、なぜフランス国民に愛されない?<Number Web> photograph by Getty Images

イブラヒモビッチを始め、世界的なタレントを擁してきたパリ・サンジェルマン。リーグでは無類の強さを発揮しているが……。

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パトリック・ウルビニ

パトリック・ウルビニPatrick Urbini

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 今季のフランス・リーグアンはパリ・サンジェルマン(PSG)が優勝した。昨季に続く2連覇、2位リールに勝ち点16差をつけての圧勝であり、この7シーズンで6度目の優勝でもある。2010年代のフランスリーグがPSGの時代であったのは間違いない。

 戦後のフランスリーグには、いくつかの偉大なチームが出現した。スタッド・ランス(1953~62年に5度優勝)、サンテティエンヌ(1967~76年に7度優勝)、オリンピック・マルセイユ(1989~92年に4連覇、翌シーズンの優勝はタイトル剥奪)、そしてリヨン(2002年から7連覇)……。PSGは、それらと比しても決して見劣りはしない。選手の構成だけを見れば、フランスリーグ史上最強であるとすらいえる。

 ところがPSGには、過去の偉大なチームとの決定的な違いがあるとジャンミシェル・ラルケ(現役引退後はオンズ・モンディアル誌の編集長などを務める傍ら、アーセン・ベンゲルとともにTV局『TF1』でフランス代表戦の解説を長く担当した)は言う。

 サンテティエンヌの元キャプテンにして、7度のリーグ優勝すべてを経験したラルケにとって、偉大なチームであることの要件とは何であるのか。『フランス・フットボール』誌4月23日発売号でラルケが語った。

監修:田村修一

偉大なチームの異なる特性。

――時代を作った偉大なチームには、リーグタイトル獲得の他に何がありましたか?

「イメージやエモーションだ。私はランスを何度も見ているし、レイモン・コパ(1958年バロンドール受賞)とは実際に対戦したこともある。

 ランスですぐに思い出すのはコパとロジェ・ピアントニのワンツーや、コパとアルマン・ペンベルヌのワンツーといったパス交換だ。

 GKがDFにボールを渡し、そこから相手ゴールまで一度も失われることなくショートパスが繋がっていく。それは監督が夢の中で思い描くような、まるでプレイステーションで遊ぶサッカーゲームの出来事のようなプレーの数々だった。

 サンテティエンヌは少し違った。

 喚起されるのは勇気であり、奮闘する選手たちのイメージだ。具体的に言えば縦横無尽に動き回るパトリック・ルベリ(兄のエルベ・ルベリは同じくサンテティエンヌに所属しリーグ得点王を2度獲得)であり、ディナモ・キエフ戦でのドミニク・ロシュトーのゴールだ。汗と労力で作り出したスタイルが多くの共感を呼んだといえる。

 マルセイユはさらにまた違う。

 私が思い起こすのはクリス・ワドルの相手をからかったプレーだったり、ジャンピエール・パパンのゴールの数々だ。だがとりわけこのチームのイメージとして強烈なのは、障害物をすべて破壊しつくすロードローラーのような強さであり、それはベルナール・カゾニやバジール・ボリ、ルディ・フェラーらが生み出したものだった」

【次ページ】 サンテティエンヌをフランス全土が応援。

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