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リーグアンで圧倒的強さのPSGは、
なぜフランス国民に愛されない? 

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パトリック・ウルビニ

パトリック・ウルビニPatrick Urbini

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posted2019/05/31 07:30

リーグアンで圧倒的強さのPSGは、なぜフランス国民に愛されない?<Number Web> photograph by Getty Images

イブラヒモビッチを始め、世界的なタレントを擁してきたパリ・サンジェルマン。リーグでは無類の強さを発揮しているが……。

サンテティエンヌをフランス全土が応援。

――歴史にいち時代を築いたチームは、その時代を反映しているといえるのでしょうか?

「その通りで、ランスの時代にテレビ放映が始まったが、戦後のモダンフットボール覚醒期であった当時は紙媒体が報道の主流だった。

 ジュスト・フォンテーヌ('58年ワールドカップ得点王)やジャン・ヴァンサン、ロベール・ジョンケらに関するすべてを『レキップ』紙や『フランス・フットボール』誌の記事から得ていた。校庭では子供たちの誰もがコパやピアントニになりたがった。またランスは、1958年ワールドカップで3位になったフランス代表とほぼ同じチームでもあった。

 それからサンテティエンヌの時代がやってくるが、1960~70年代はフランス代表の低迷期であり不振を極めていた。だから人々の関心が自然とサンテティエンヌに向かった。

 ヨーロッパカップがある水曜は、マルセイユやボルドー、PSGのサポーターたちも試合になるとサンテティエンヌの応援に回った。いま50代以上の人々が、テレビの前で友人たちと一緒に親密な夜を過ごせたのはまさにわれわれのおかげだった。大スターはひとりもいなかったが、フランス全土がわれわれに共感し、かつてない全国的なコンセンサスを得ることができた。それは今日のPSGでは考えられない統一感であり盛り上がりだった。

 今は違う。サッカーはグローバル化し画一化した。社会も変わった。テレビをザッピングして、誰もが好きな試合を勝手に見ている」

パリ以外は涙を流さない。

――今日、PSGに注がれる眼差しはより厳しくなっているのでしょうか?

「クラブとカタールの目標が、誰からも愛される存在になることなのかどうか私にはわからないが……。海外資本の力でクラブが強くなったことをフランス人の誰もが知っている。選手は誰もが一線級で、獲得したタイトルはサンテティエンヌやランスが得たものと同じ価値を持つ。

 だが、彼らのポテンシャルと寄せられる期待を考えれば、与えられるのは別の評価だ。彼らは常に厳しい目で見られている。

 リヨンも少し似ていて、国内タイトルを獲得したこと以外は評価されていない。あるとき私はジャンミシェル・オラス(リヨン会長)にこう言った。

『あなたは(フランス人からの)完ぺきな愛を求めているが、努力が報われることはあり得ない。たとえ10連覇を成し遂げても不可能でしょう』と。

 PSGに話を戻せば、マンチェスター・ユナイテッドに敗れたこととバルセロナ戦の逆転負けが墓穴を大きくした。パリ以外の地域では、誰もPSGのために涙を流しはしない。クラブは無関心や嫉妬よりも、皮肉や嘲笑を誘発している」

【次ページ】 現代サッカーの最大の目標。

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