Jをめぐる冒険BACK NUMBER
朝の情報番組でマニアックな戦術論。
「みんなのレノファ」の志が熱い。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/05/31 11:00
「みんなのレノファ」を支える十川プロデューサー(左)と楢崎アナ。朝の情報番組と思えぬ濃度で、レノファ山口を熱く深く扱っている。
山口にサッカー文化を根付かせる。
帰国した十川は東京の映像プロダクションに就職。その後、縁があって地元のyabに転職した。日本代表がワールドカップに初出場した翌年、'99年のことだ。
「まだ開局5年目だったので、いろんなことにチャレンジできそうだなと思って」
そして、'06年にレノファ山口が誕生すると、ここぞとばかりに、社内で積極的に働きかけていくのだ。
ホームスタジアムをオレンジで埋め、地元・山口にサッカー文化を根付かせる――。
こうした夢を抱く十川にとって、「みんレノ」を朝の情報番組に組み込むことは、温めていた策でもあった。
「単独番組だった頃、コアなサポーターばかりが見るようになっちゃったんです。でも、それは僕らの望むことではない。サッカー文化を根付かせるためには、サッカーに興味のない人、年配の方々にも見てもらいたい。レノファサポーターを増やすということを考えたとき、『どき生てれび』のいちコーナーのほうがいい、と思ったんです」
136万人の人口の3割が60歳以上の高齢者だと言われる山口で、2万人収容の維新百年記念公園陸上競技場を満員にするには、この層を取り込まないわけにはいかない。
チームの応援番組だと、サッカーに興味のない人が観ることはまずないだろう。なるほど、朝の情報番組のコーナーなら、番組を観ている高齢者もそのまま「みんレノ」を観てくれるに違いない、というわけだ。
戦術解説がマニアックすぎて……。
情報番組に内包され、20~30分の時間を得たことで、新企画が次々と生まれた。
・解説者がマニアックな内容を優しく説明する「戦術企画」
・疑問を分かりやすく解き明かす「みんレノ講座」
・選手の内面にディープに迫るインタビュー企画「one way」
どれも、サッカーファンとサッカーに詳しくない層の両方に楽しんでもらえるように、と考えられた企画である。
戦術企画が生まれたきっかけは、'17年から試合映像の制作をyabが請け負うようになったことだった。中継のために解説者を招くわけだから、「みんレノ」でも解説してもらうのはどうか――。
こうして、小林伸二さん、幸谷秀巳さん、福田正博さん、中島浩司さん、森崎浩司さんといった面々がスタジオに登場した。
もっとも、小林さんが初登場した回では、失敗を犯してしまった。十川が頭をかきながら苦笑いする。
「マニアックすぎて、スタジオがシーンとなってしまったんです。伸二さんも反省されたようで、次の出演前には奥さん相手にリハーサルをして来てくれた。奥さんには『何を言ってるのか、さっぱり分からない』と厳しくダメ出しされたようです」