Jをめぐる冒険BACK NUMBER
朝の情報番組でマニアックな戦術論。
「みんなのレノファ」の志が熱い。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2019/05/31 11:00
「みんなのレノファ」を支える十川プロデューサー(左)と楢崎アナ。朝の情報番組と思えぬ濃度で、レノファ山口を熱く深く扱っている。
詳しくない=視聴者の代弁者に。
一方のスタジオサイドも、素人目線でどんどん質問するようにした。
スタジオにいるのは、「どき生てれび」に出演するタレント、アナウンサーたちである。サッカーに詳しくない人ばかりだが、だからこそ、同じようにサッカーをよく分かっていない視聴者の代弁者になるのだ。
「あるとき、女性MCから『レノファは4-3-3って言いましたが、足したら10にしかならないですよね。あとひとりは、どこに行ってしまったんですか?』という質問が出た。こういう質問がいいんですよ(笑)」
一方、「みんレノ講座」は楢崎の肝いりだ。楢崎が熱を込める。
「自分が理解していなければ、番組は作れない。だから、気になったことをいろいろ調べているんですけど、せっかくなので、それをコーナーにしてみようって」
ボスマン判決、高木豊氏との会話。
そのテーマがなかなか渋いのだ。
例えば、ある回で扱ったのは、ボスマン判決である。
これは、所属クラブとの契約が満了となったプロサッカー選手は、他クラブへ自由に移籍できる。さらに、EU域内のクラブはEU加盟国の国籍を持つ選手を外国籍扱いにしない、というものだ。
サッカー選手は野球選手に比べ、移籍の自由が許されている。そのことに疑問を抱いた楢崎が、野球との比較を調べていて行き着いたテーマだった。
そんな楢崎にとって印象深いのは、元プロ野球選手の高木豊氏を招いた回だという。
当時、レノファ山口は連敗中。自身の三男、大輔が所属していることもあり、高木は厳しい言葉を口にした。
「高木さんは『彼らはプロなんだから、ブーイングのひとつもしないとダメだよ』って。『甘やかしちゃダメだ』と。そのとき、僕は反射的に『覚悟を持って、甘くいたいです』と言ってしまった。
十川には褒めてもらったんですけど、勝っても負けても応援するというスタンスは絶対に貫かないといけない。山口を盛り上げたい、山口の町興しのためにやっているんだ、という想いを再確認した出来事でした」