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オコエは相手捕手にも遠慮なく聞く。
打率1割台でも、成長が見える理由。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/05/18 10:05
今季は開幕スタメンを勝ち取り、5月15日現在で3本のホームランを打っているオコエ。
「怖さ」に気づけたことも成長。
結局は、気持ち気持ち――オコエが拳で胸を叩きながら心理を俯瞰する。
「技術より、自分のなかにある怖さの問題なんで。そこに気づけただけでもレベルアップできていると思うんですよ。2年目までは、ただバットを振っていただけ。去年はインコースを攻められてダメだった。でも今年は、相手がボール球を使って勝負するようになってきたってことで、『自分は成長できているんだな』って思うわけですよ。これが経験なんだなって。しっかり積んでいるんだなって」
プロになってからのオコエは、その時点で手応えを掴んでいれば「いい感じ」といった趣旨のコメントを残してはいた。その形が一時期でも成果を覗かせれば「完成形」のような論調で称えられ、ひとたび打てなくなれば、それまでの取り組みが、まるで低調の一端であるかのような批判を受けたこともあった。
ドラフト1位として常に注目を浴びるオコエは、それでも足元から目を逸らさなかった。好奇の目に惑わされることなく、打撃改革を自らに課していたわけだ。
1年目は「振る」、2年目は「フライボール」。
これまでの歩み。それは、大きく三段階に分けられるだろう。
プロに入ったオコエがまず足りないと感じたことは、純粋にバットを振れていないことだった。
1年目はコーチの技術指導に熱を入れつつ、精力を注いでいたのは「ひたすらバットを振る」こと。オコエはボールを捉えるスキルよりも、バットを振る体力を養ったのである。その練習に1年間、費やしたことで「徐々にプロのボールにもタイミングが合うようになってきた」と、オコエは述懐している。
土台を築いて臨んだ2年目は、出だしこそ故障で大きく出遅れたが、復帰してからは最適な角度でスイングすることを意識した。
それは、一般的に「フライボール革命」とも呼ばれるスイング理論だ。30度前後の角度でスイングすれば長打が出やすいというデータがあり、その領域は「バレルゾーン」として認知されているが、オコエの場合、本塁打の量産を目指して取り組んできたわけではない。