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マスターズ最終日を戦った金谷拓実。
差を感じ、ホールインワンにしびれ。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAFLO

posted2019/05/08 07:00

マスターズ最終日を戦った金谷拓実。差を感じ、ホールインワンにしびれ。<Number Web> photograph by AFLO

マスターズの地をアマチュアで踏むことの意味は大きい。金谷拓実は松山英樹のあとを追うことができるか。

タイガーのスコアが伸びないことを祈った。

 インタビューの合間に首位を走っていたアダム・スコットに一時11打差をつけられたことを知ったが、その後、練習場脇にあるキャディルームのモニターで、再び10打差になったのが分かった。

 まだホールを残していた上位選手たちのスコアが気になって、帰りの車でもドキドキしっぱなし。宿舎に帰り、ルイ・ウーストハイゼンのフィニッシュに安堵し、最後はタイガー・ウッズに「スコアを伸ばさないで!」と祈りを込めていたというから、その瞬間は世界的にも“マイノリティ”に属した人間だったと言っていい。

 願い通じて週末に残り、最終成績は5オーバー58位だった。出場した6人のアマチュアの中では4番目。ひとつの目標であった、大学OBの先輩・松山が'11年大会で、中国の関天朗が'13年大会で達成したアジア勢のローアマチュア獲得はならなかった。

現地のキャディと、慣れない英語で。

 それでも20歳の当地での振る舞いには、7つ年上の松山とはまた違った手法でマスターズにアプローチする新鮮なものもあった。

 金谷はかねて海外での試合では、現地で働くハウスキャディを本戦で起用し、今回もオーガスタナショナルGCに勤める米国人を横に据えた。「やっぱりコースを一番分かっていると思うし、自分のためになると思って選びました」。上達を目指す英語でやりとりし、手助けを得ていった。

 開幕前には出場アマチュアだけが宿泊できるクラブハウスの屋根裏部屋、通称クロウズネストにも1泊した。他のアマ選手と一夜をともにし、頭上を英会話が飛び交う環境に、より思うところがあったのも想像に難くない。記念写真も撮った。いずれプロになり、再びマスターズで顔を合わせるような時が来れば、ストーリーのこの上ない1ページになる。

 実体験を恐れず、自分の身をその環境に置いて、目で見て、感じて、考える。多くのトップ選手がそうであるように、金谷も若くしてそんな能力を備えているようであった。

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