ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
マスターズ最終日を戦った金谷拓実。
差を感じ、ホールインワンにしびれ。
posted2019/05/08 07:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
ひっそりと佇む広大な景色に、思わず息をのむようだった。
4月、マスターズ開幕を翌週に控えた金曜日。20歳の金谷拓実はまだ誰もいないドライビングレンジに足を踏み入れていた。
会場のオーガスタナショナルGCは練習場もスゴイ。足元は美しく整備された天然芝、後方には常設のギャラリースタンド。300ydをゆうに越える敷地があるだけでなく、実際のコースと同じ形状のグリーンやバンカーがいくつか設けられ、本番を想定したショットを打てる。
実はその日、出場する多くのプロには予め「午後1時から練習が可能」という通達があったのだが、金谷は午前中にはコースに入り、午後0時にはこのレンジでボールを打ち始めていた。夢の舞台をまるで、独り占めするかのように。
マスターズへのエントリーは2番目の早さ。
前年秋にアジアパシフィックアマチュア選手権で優勝した金谷は、松山英樹(2011&2012年)以来の日本人アマとして今年、メジャー第1戦に初挑戦した。
マスターズは出場選手全員に登録番号を与えている。期間中、キャディの左胸に入るナンバーがそれで、毎年ディフェンディングチャンピオンが「1」を付けることが決まっているが、それ以降はすべて会場でエントリーした順番による。金谷は「3」だったから、なかなかの鼻息の荒さもうかがえた(ちなみに「2」はトミー・フリートウッドだった)。
'15年に日本アマチュア選手権を史上最年少となる17歳51日で制し、'17年には日本オープンで池田勇太と優勝争いを演じたジュニア時代からの注目株は、東北福祉大の新3年生。身長は170cmそこそこで、発展途上にある現在の飛距離性能では苦戦が予想されたが、予選を通過して4日間を戦い抜いた。
振り返れば、2日目は激動の1日だった。終盤に粘って74でホールアウトした時点では予選通過が微妙なところだった。マスターズは36ホールを終えて50位タイまで、もしくは首位と10打差以内の選手が決勝ラウンドに進出するという独自のカットラインを設けている。金谷は50位以内から漏れ、この“10ストロークルール”に一縷の望みをかけた。