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「FWとして勝負できるクラブへ」
岡崎慎司が移籍を決意するまで。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTomoko Nagakawa
posted2019/05/01 11:30
冬の移籍市場では同じリーグのハダースフィールドなどからオファーが来ていたというが、果たしてどこへ移籍するのだろうか。
「年齢的に時間があれば……」
そもそも岡崎がプレミアリーグへ挑戦したのは、「身体能力の高い選手が多く、そこで劣る自分にとってもっとも厳しいリーグだった」から。
そういう場所でいかに生き残るのか――。その答えのひとつが、攻守にわたるハードワークで周囲を活かすプレーだった。その路線でチームに効力を与えられることは証明したが、それプラス、ゴールを決める選手になりたかった。ゴールも決められて、アシストもできれば、新しいストライカー像を示せるという想いもあった。
「年齢的に時間があれば、プレミアリーグで二桁ゴールをするためのチャレンジを続けたかったけれど、そういう時間が僕にはない。このまま移籍するのは、ここではFWとして活躍できなかったということ。でももがいた結果、準ストライカー枠みたいなものを手にできたのかなとも思う」
ゴールが全てではないが、絶対的な指標でもある。
そんな岡崎が自身に近い方向性と感じているのが、リバプールの9番、ロベルト・フィルミーノだ。
「ドリブルで仕掛けられるし、中盤に下がったときに前を向いての選択肢が多い。アシストもできるし、当然ゴールも決められる。とにかく多才で高いレベルのプレーができる選手。
でもリバプールでストライカーといえば、(モハメド・)サラーや(サディオ・)マネ。二桁ゴールを挙げていてもフィルミーノはエースストライカーではない。だけど、彼の存在は非常に大きいと感じています。僕もフィルミーノのように、チームをサポートしながらも、ゴール前へ入るというのを究めたかった」
ドイツ・マインツでは2季連続二桁得点を挙げた岡崎がプレミアリーグで直面した課題は、日本人ストライカーの誰もが抱えるものだろう。個の力だけで外国人ストライカーには勝てない。組織の駒としてチームを回す力は高く、そこで出場機会は得ても、ゴール数が足りずにストライカーとして絶対的な評価は得づらい。
「ゴールがすべてだとは思わないけれど、ゴール数がサッカー選手を分けるのは事実」
世界最高峰のストライカーが揃うプレミアリーグに身を投じたからこそ、岡崎はその現実を噛みしめ、新天地でも改めてストライカーとしての勝負にこだわりたいと誓う。
「どんな監督でもどんなチームでも、どこへ行っても結果が残せる選手が最高の選手だと思う。だから、クリスティアーノ・ロナウドはやっぱりすごいと思います。そう考えると、違う国、違うクラブ、環境へ行けば、また僕の新しい可能性が引き出せるんじゃないかという欲もあります。まだ日本へ戻ることは考えてはいません。海外でプレーし続けることが、僕にとっての日本への恩返しになると思うので。試合に出場できる場所ではなく、FWで勝負できる場所。それを求めている」