スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
カーヴ三羽烏とオープナー。
レイズの奇策はMLBを席巻するか。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/04/27 10:00
4月8日、シカゴ・ホワイトソックス戦に先発したブレイク・スネル。レイズの好調を支える1人だ。
エース、スネルの驚異的な数字。
エースはもちろんスネルだ。mlb.comのビデオを見てもらえばわかるが、今季のスネルは凄みを増している。25イニングスを投げて奪三振36、与四球4。9回あたりの三振奪取数は、昨季の11.0から13.0に上がり、三振/四球のレシオも、9.0という驚異的な数字を叩き出している。
目立った変化といえば、カーヴの比率が、昨季の20.2%から31.9%に増えていることだ。今季のレパートリーを見ると、フォーシーム=41.6%、カーヴ=31.9%、チェンジアップ=18.8%、スライダー=7.5%、カッター=0.3%という結果(statcast参照)が出ている。
映像を見ても、155キロの速球と大きく割れる130キロのカーヴとの落差が大きく、打者がきりきり舞いさせられている姿が眼に焼き付く。これは当分、打ち崩せないのではないか、という気もする。
劇画を見るかのような決まり方。
若手のなかではタイラー・グラスノーが躍進株だ。昨夏、クリス・アーチャーとの1対3トレードでパイレーツからレイズにやってきた203センチの長身右腕だが、この人もカーヴの割合が急増した。昨季18.9%だったのに対して、今季は27.0%。
被本塁打率が大幅に下がったのは(昨季=55回3分の2で10本。今季=24回で1本)、シンカー(ラーンチ・アングル打法の餌食になりやすい)やチェンジアップをほぼ封印して、高速回転のカーヴと154キロのフォーシームの落差で勝負しているからだろう。
渋い脇役チャーリー・モートンの活躍も見逃せない。パイレーツやアストロズのユニフォームが記憶に残る35歳のヴェテランだが、今季は26回3分の2を投げてすでに34個の三振を奪っている。
彼の武器もカーヴ。というより、モートンの場合は、カーヴが35%でフォーシームが25.4%、シンカーが22.3%と配合比率が特殊だ。速球はいまでも150キロに達するが、なによりも高速回転カーヴの切れ味が抜群で、この球種の被打率は1割4厘。3つ目のストライクを狙って取りにいくときの決まり方などは、ほとんど劇画を見ている気分になる。