“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“高校サッカーの元スター”の岐路。
小屋松知哉はサンガの顔となれるか。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/03/30 07:00
左サイドで攻撃の起点となる京都MF小屋松。J2の舞台で輝きを取り戻す。
今季初ゴールもチームはドロー。
2勝1敗1分で迎えた第5節のジェフユナイテッド千葉戦、左サイドハーフとして出場した小屋松は、ついに今季初ゴールを手にした。
21分、相手の苦し紛れの横パスを右サイドハーフのジュニーニョが鋭い出足でインターセプトすると、逆サイドでDFの裏をついた小屋松が、両手を上げてクロスを要求しながらゴール前に加速。ここにライナー性のクロスが届くと、左足のインサイドで丁寧にミートし、コースを切っていた相手GKを物ともせず、角度のないところからゴールに突き刺した。
待望の今季初ゴール。
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それ以降も自陣深くでボールを受けると、千葉DFを引き剥がし、FW宮吉拓実や重廣、ジュニーニョの飛び出しをうまく引き出した。
だが、チームは76分に左CKから痛恨の同点弾を浴び、1-1のドロー決着に終わった。タイムアップの瞬間、小屋松はその場に座り込み、しばらく動かなかった。
「今日は勝たないとダメだった」
表情には悔しさが滲んでいた。
しかし、小屋松は大きな手応えも掴んでいた。それは中田監督のもと、フォーメーションが変わっても変わらないコンセプトの下でサッカーができていることだった。
観ている人を魅了するサッカー。
「今、観ている人たちが楽しんでくれるサッカーができている。勝負にはもちろんこだわっているし、勝たないといけない。でも、その中で観ている人がまたスタジアムに来たい、もっと応援したいと思ってくれるサッカーをすることは大事なことだと思うんです。そういうサッカーができないと上には行けないし、それを貫かないといけない。
苦しい状況は今後もあると思うけど、それでも京都のサッカーを根付かせる。『京都スタイル』を確立することをこの1年をかけてやっていきたい。
僕はその鍵を握っている自負はあります。年齢的にもそうですし、ポジション的にも勝敗に関わる場所。今のポジションはゴール、アシストという目に見える結果がすべて。サイドの選手が点を取ったり、点に絡めば、後ろも安心して守れるし、信頼してボールを配給してもらえる。そういう面ではこれまでの4試合はそれを出し切れていなかった。リーグ戦における千葉戦はひとつのピリオドの節なので、そこで点を取れたことは大きいと思います」