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監督業に戻ってきた浦安・都並敏史。
解説者としての経験がもたらすもの。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byBRIOBECCA URAYASU
posted2019/03/29 06:30
解説中と同じ快活な声を響かせ、都並敏史監督はブリオベッカ浦安での日々を過ごしている。
オフトっていい監督だと思う。
新チームのビジョンは明確だ。選手たちの個性に合った組み合わせ、システム、戦術を採用。マネジメントにも心を砕く。思い返せば、昔は競争をさせすぎて、安定感を欠いた。
信頼して起用を続けることの大切さを痛感している。話しすぎていたミーティングも変えた。選手全体への説明は、なるべく簡潔にまとめている。
「いろいろと気がついてから、かつて日本代表を率いた(ハンス・)オフトっていい監督だったと思う。キャプテンとも対話していたし、選手が迷わないように言うこともシンプルだった。選手時代は、同じことしか言わないなと思っていたけど(笑)」
解説者としての経験も、いま監督業に大いに生きている。客観的に多くのサッカーを見ることであらゆる戦術、戦略を学んだ。引き出しには多くの知識が詰まっている。
「自分の本音をしっかり話す」
もちろん、それだけではない。テレビの世界に身を置き、実感していることがある。
「分かりやすく人に伝える上で最も大事なのは、自分の本音をしっかり話すこと。腹の底から出た言葉こそが、視聴者に一番伝わる。いくら理路整然ときれいな言葉を並べても、上っ面だけでは視聴率にはね返らない。これを学べたことはとても大きい。
監督も一緒。選手にいかに伝えられるかどうか。人が気持ちよく動くか、動かないかなんだから。いまは、心に響く発言ができているという自負がある。でも、いつそれを話すかはもっと大切。タイミングだよね。そこが監督の腕だと思う。俺はその経験が乏しいし、まだまだ下っ端だと思っている。謙虚に学んでいるところ」
自らを飾ることもなければ、虚勢を張ることもない。自信の裏側もさらけ出す。熱い語り口調は、テレビ画面を通じて聞くそのまま。これが、腹の底から出る言葉である。