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<僕たちのイチ論。>
清原和博「あの日、イチローは言ったんです……」
posted2019/03/17 17:00

故・仰木彬監督による縁もあり、清原の要請を快諾する形でイチローが'06年の宮古島キャンプに参加。
text by

鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
KYODO
いざ、口を開こうという段になって、清原和博は頭を抱え込んでしまった。
「会った瞬間に理屈抜きで思ったんです。ただ、なんていうのか、2人じゃないとわからない、感覚的なものなんです……」
イチローと初めて深く交錯したのは2006年初頭のことだった。清原は巨人から事実上、戦力外とされ、オリックスへの入団を決めていた。そこへ、すでに世界に認知されていた「ICHIRO」から食事の誘いがあったのだという。
神戸の夜。
良くも悪くも一瞬にしか生きられない無冠の帝王と、病的に映るほど日々の浮き沈みを排し、積み重ねることの価値を「200」という数字で世に知らしめていた新時代のスターとでは、重なるところなどないのではないか。
周りからそう見られていた2人は、この夜を境に見事に融合した。
なぜか。
今、清原はそれを言葉にしようと煩悶している。失くすはずのない、失ってはいけない記憶を頭の中から引っぱり出そうとして、短く刈り込んだ頭をかきむしりながら「うーん……」と唸っている。
「そもそも、世界中を探してもイチローのバッティングを語れる人なんていないと思うんですよ……」
そう言いながらも、語りたいことがある。
「でも……、打者として僕らに共通していたのはボールを遠くに飛ばせるということでした。だから、イチローを尊敬していたんです。僕の場合は体も大きいですし、筋力的にもパワーがあると思うんですが、イチローは僕に比べて線も細いし、筋力も違うと思う。それなのに、僕と同じくらい飛ばすんですから。僕とは飛ばし方が違う。そういうことなんでしょう。理屈は分からなかったんですが、それだけ技術があるということだと思うんです」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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